2023年2月07日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
ポピュリズムと原発推進

ぼくは今、原発に関して不安に思っている。それは、ウクライナ戦争で原発が攻撃され、破壊される心配があるからではない。


心配なのは、気候危機問題やエネルギーの安全供給問題、カーボンニュートラルなど環境やエネルギーに関わる問題において、原発が『救世主』でもあるかのように扱われていることだ。


そのいくつかの事例は、本サイトでも取り上げた。たとえば、「核燃料のロシア依存は問題ない?」や「原発推進に走る日本につける薬はないのか」などの記事だ。


さらに、気候変動問題で政府に早急な対策を求めるドイツの若者グループ「フライデーズ・フォー・フューチャー(FFF)」においてさえも、気候対策として原発を容認する声が聞かれる。


欧州連合(EU)においても、原発が持続可能な『グリーンテクノロジー』だとして、持続可能なエネルギーへの投資を促進するためのタクソノミー・リストに入った(「欧州委、原子力と天然ガスでグリーンウォッシングを確定」)。


原発は発電において、二酸化炭素を排出しない。でもそう主張するのは、単純な論理にすぎない。原発がそう簡単に気候変動対策にならないのは、本サイトのいろいろなところで論じてきた。ここでは、それを繰り返すつもりはない。


ブロックドルフ原発
ドイツ北西部にあるブロックドルフ原発は、ドイツの反原発運動のメッカの一つだった。その原発も、2021年末で最終的に停止された。

論理の単純さゆえ、その論理は気候変動対策だと主張するために悪用される。この単純な論理によって気候変動から原発推進へと進めようとする試みは、ポピュリズムの何物でもない。


言論の自由があるのだから、そう主張することを禁止しようとは思わない。


ただしそのツケが、将来取り返しがつかなくなる心配があることを忘れないでほしい。それは、放射性廃棄物(核のごみ)の問題だけではない。


原発では気候変動を解決できないことが将来わかっても、その時はもう遅い。もう取り返しがつかない。その負担は、若い世代や後世世代が負うことになる。


しかしその負担を負う次の世代が、原発を選択したわけではない。選択するのは、今の世代だ。その選択に対して、今の世代は責任を負うことはできない。


責任を負えないからこそ、単純な論理で原発推進をと唱えてほしくない。原発と気候変動の問題は、ポピュリズムによる簡単な論理で解決できるものではない。そのことを知らないで、ポピュリズムから原発推進を主張していては、次の世代の将来を破壊してしまうだけだ。


そのことをしっかり自覚してほしい。


気候変動問題では、今選択するのは、今の世代のために選択しているのではない。これからの世代のために選択している。でもこれからの世代は、今選択するだけの権限も権力も持っていない。その点で、彼らは今の世代の選択に依存しなければならない。


その点で原発と気候変動の問題においては、今の世代の選択に依存するこれからの世代に民主主義は機能しない。機能しないどころか、そこには民主主義はない。


それだからこそ、今の世代は次の世代のことを考えて判断し、選択しなければならない。


(2023年2月07日)
記事一覧へ
関連記事:
核燃料のロシア依存は問題ない?
核燃料は簡単に他社製に切り替えられるのか
原発推進に走る日本につける薬はないのか
欧州委、原子力と天然ガスでグリーンウォッシングを確定
関連サイト:
ドイツ経済省と環境省による脱原発延期検討結果の結論(ドイツ語)
GXリーグ基本構想(経済産業省)
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ