ドイツは2045年までに、二酸化炭素などの排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現することを目標にしている。
そのためには、再生可能エネルギーの利用をこれまでよりも3倍のテンポで拡大しなければならない。そのことについては、たとえば「ドイツが再エネ電力の割合を2030年までに80%にするのは、すごい挑戦」の記事などで報告してきた。
これまでの政策では、産業と発電においてカーボンニュートラルを実現する施策が講じられてきた。しかしそれだけでは、カーボンユートラルは実現できない。今後のターゲットは、一般市民の生活だ。そこにもメスを入れなければ、カーボンニュートラルは達成できない。
具体的には、自家用車の利用であり、家庭における暖房、調理、給湯などの熱供給だ。
自家用車は、電気自動車化することでカーボンニュートラルを実現する。ただそのためには、使用する電気が再エネで発電されていなければならない。
暖房や調理、給湯などの熱供給は、オール電化することで対応する。その電気が再エネで発電されておれば、二酸化炭素などは排出されない。そのため、調理には電気コンロ、暖房と給湯にはたとえばヒートポンプを利用する。
ヒートポンプは日本でいえば、エアコンだ。ドイツではそれに対し、冬の暖房用にヒートポンプを使う(「ドイツ政府、石油・ガス暖房器を廃止へ」)。
ただそれだけでは、一般市民の生活をカーボンニュートラル化したことにはならない。一般市民の生活が、家庭だけに止まるわけではないからだ。
たとえばこどもは、学校に通学する。こどもたちの勉強する学校も、カーボンニュートラル化しなければならない。
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ベルリンのある中高統合校(ギムナジウム)の校舎には、f大学入学資格を取得して卒業していった生徒たちがそれぞれ書いた卒業銘板があった |
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まず、学校で使用する電気を再エネ化しなければならない。学校の屋根にソーラーパネルをつけて、自家発電することもできる。ただドイツでは、公共施設におけるソーラーパネルの設置は助成対象にされない。むしろ市民イニシアチブによって、学校の屋根にソーラーパネルが設置されている。
それに対して日本では、環境を配慮した学校施設(エコスクール)を整備推進するため、「エコスクールパイロット・モデル事業」によって、学校の屋根のソーラーパネルの設置などが助成されている。
ドイツでは、教員や学校関係者、その他父兄などが学校において電気自動車を充電できるように、学校の敷地内に充電ステーションを設置するプロジェクトが進んでいる。それをさらに、周辺の住民にも解放して夜間充電できるようにする。
社会の再エネ化には、エネルギー消費を削減するのがとても重要となる。社会すべてにおいて、省エネしなければならない。学校でも省エネを実現するため、ドイツの各地で様々な試みが行われている。
たとえばドイツ西部のドゥイスブルクには、「ESPADU」という学校で省エネを促進するプロジェクトがある。プロジェクトはすでに、20年間続いているという。
ドゥイスブルクは、ドイツの製鉄最大手ティッセンクルップの製鉄所があるところ。同社は2025年に、高炉に水素を入れてグリーン製鉄を可能とする水素高炉を稼働させたいとしている。
地元のギムナジウム(大学進学を目的とする中高統合校)では、こうした地元における技術移転を中高生に知ってもらいながら、再エネ教育をする試みも検討されている。
こうした地元と密着したエネルギー転換教育も必要だ。
(2023年5月13日)
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