ドイツでは依然として、熱供給の80%以上が化石燃料に依存している。たとえばドイツで消費される天然ガスの半分近くは、熱供給に使われている。
ぼくは本サイトにおいて、ドイツが2045年までにカーボンニュートラルを実現するには、熱供給が一番の課題になると書いたことがある(「熱のことを忘れないで」)。できるだけ早く、熱供給を再生可能エネルギーに切り替える取り組みを開始しないと、予定通りにカーボンニュートラルを実現することはできない。
社民党と緑の党、自民党で連立する現政権の連立協定において、熱供給の再エネ化は2025年から取り組むことで合意されていた。しかしウクライナ侵略戦争に伴うエネルギー供給危機問題で、ドイツ政府はそれを1年間前倒しする。
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写真真ん中の上部が灰色で、縦長の白いボックスがヒートポンプ。ドイツではピートポンプは、再エネに属する |
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ドイツ経済省と建設省が共同で作成した法案によると、2024年1月から熱供給の65%を再エネで行うよう切り替える。
そのため新築建物では、地域熱源供給網から熱供給を受けるか、再エネ化65%の条件を満たすヒートポンプなどの暖房システムを設置しなければならなくなる。電気暖房も認められる。
個人住宅では、たとえばヒートポンプが優先される。ヒートポンプは、ドイツを含めたEUでは再エネと定義されている。
新築の建物では、石油や天然ガスによる暖房ボイラーは設置できなくなる。
既存の建物では依然として、既存の石油暖房ないしガス暖房を利用することが認められる。故障した場合も、それを修理して使うことができる。ただし化石燃料暖房の稼働期間は、設置から30年に制限される。
ボイラーなどの既存暖房器を取り換えなければならなくなった場合、新築時の条件が適用される。それに加え、バイオマス(薪やペレット)暖房のほか、バイオガス暖房(再エネ電力で製造されたグリーン水素も可能)も認められる。
既存の建物ではその他に、ヒートポンプと石油ないしガス暖房を共用することも認められる。ただし石油ないしガス暖房は、寒さが厳しくなってヒートポンプの容量では十分に暖房できない場合の補助として使うことに限定される。
熱供給の再エネ化には、いろいろな助成制度も設けられている。しかし住宅所有者などからはすでに強い反発する声が出ており、今後政府が社会をどう説得して同意を得ることができるかが重要なポイントになる。
(2023年3月04日)
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