前回「原発を記念碑として残すべきか?」の記事において、ドイツでは最終処分に関するデータと図書を最低2か所において500年間保管することになっていると書いた。
最終処分の問題に関して、連邦議会(下院)内に超党派で設置された放射性廃棄物処分委員会の最終報告書(B部6.7.3.項)が、そう勧告している。
放射性廃棄物の最終処分は長期に渡るだけに、最終処分地に関連するデータとその図書を後世の世代に残しておくことはとても重要だ。ただそのために、関連図書を500年保管しておくだけでいいのだろうか。
500年という期間は、放射性廃棄物を地下に地層処分してから最初の500年間、放射性廃棄物を掘り起こす可能性を残しておくことになっているからだ。掘り起こし期間はすでに、法的にも規定されている。
最終処分関連図書保管500年の原則は、掘り起こす可能性を残しておく500年間さえ図書があれば、それで十分だという考えからきていると思う。
500年を過ぎると、最終処分地では放射性廃棄物が地層に完全に閉じ込められ、封鎖される。その後、法的に規定された最終処分期間である100万年の間、放射性廃棄物を地層に眠らせておけばいいとの考えなのだと推測できる。
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写真は、地層処分調査目的に岩塩層に設置された地下坑道。ドイツ北部のゴアレーベン調査坑で撮影。なおゴアレーベンの岩塩層は、最終処分には適さないとして最終処分候補地から除外された |
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最終処分図書の保存期間は、科学的に検証され、議論されてそう決まったのだと見られる。
たとえ放射性廃棄物が地層に密封されていても、100万年という年月はとてつもなく長い。その期間に、地層で何が起こるかわからない。それは、現段階の科学的には想定できない問題ではないのか。
そのリスクは多分、ごく小さいかもしれない。しかしぼくは、そのリスクを担保しておきべきだと考えている。そのためには、最終処分地に関する図書は、最終処分の期間中いつでも閲覧できる可能性を残しておきべきではないだろうか。
それが、原子力を利用してきたぼくたちの世代の責任ではないか。
ここで問題になるのは、100万年後の世代が現在の図書で使われている言語を理解できるかと、さらに図書の存在を100万年間、どう継承していくかだ。
この問題は、現段階の学術レベルでは解決できない可能性が高い。その場合は、放射性廃棄物の存在を次の世代から次の世代に伝えていくためのルール造りだけでもしておくべきではないだろうか。
ぼくはそう思っている。
(2024年7月23日) |