2024年6月27日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
脱炭素社会は水素社会という誤解

前回、港における脱炭素化の課題について書いた(「港を脱炭素化する」)。


脱炭素社会を達成するには、物流量の多い港を脱炭素化するのも重要な課題。そう簡単なことではない。


ただハンブルク港において港の管理会社から話を聞いて、いろいろ疑問も抱いた。


その一番の疑問は、港が輸入水素の搬入・受け入れ港となるのは明らかだが、それによって脱炭素社会が水素社会になると誤解されていることだった。


確かに、港が水素を輸入する窓口になり、多量に輸入すれば、港はより大切なインフラとなり、多額の利益を上げることができるようになる。


そのためにすでに土地を購入して、水素備蓄拠点を港に設置する準備が行われていた。港が将来、水素港になっていくということか。


水素港の設置ではすでに、国際港間で競争が激化しているという。それに乗り遅れると、港の将来を破壊しかねない。そういう思いが強く感じられた。


水素は爆発性が強い。それを船で輸送するため、アンモニアに変えて輸送する。港でもそのまま、アンモニアの形で保管する。アンモニアはその後に、水素に変えられる。


ちょっと待て。


水素は中東などで再生可能エネルギーで発電された電気を多量に使って製造されるが、それからアンモニアを製造するには、一体どれくらいの電気が必要になるのか。


さらにそれを輸入後に、電気を使ってアンモニアから水素にしなければならない。


何と非効率なことをして、わざわざグリーン水素を輸入するのか。それで採算性があるのか。実用性があるのか、とても疑問だ。


港管理会社の説明では、脱炭素社会が水素社会になることしか考えられていないかのようだった。一般家庭においても将来、水素で調理、暖房することになると説明された。


そうなると、一体どれくらいの水素が必要なのか。それに必要な電気をすべて、再エネで発電できるのか。想像もつかない。


本サイトでは何回も、電気は電気として最終エネルギーとして使うのが最も効率がいいと書いた。それを前提にして、電気の消費をできるだけ削減する方法を考えないと、脱炭素社会は達成できない。


それでは水素によって、港に大きな利益がもたらされないのはわかる。しかし、電気を最終エネルギーとして脱炭素化するのが最も合理的で、効率のいい方法だ。


港の管理管理会社によると、港構内に再エネ発電施設も設置したいのだが、それは後手に回っているといわれた。それこそが今、港がやるべきことではないのか。港には、たくさんの土地がある。


写真左に見えるガラス張りの建物は、ハンブル港にある「エルプフィルハーモニー」というコンサートホールだ。エルプフィルハーモニーは今、ハンブルクに人を惹きつける看板的な存在になっている。


こうして港と文化を結びつけるのも、港の魅力を引き上げる要素だ。


それによって、港に付加価値がもたらされる。水素のインフラというハードウェアによって港の利益を増大させるよりも、港を将来、文化というソフトウェアと組み合わせることで、港の持続性がより高まるはずだ。


(2023年6月27日)
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関連リンク:
ハンブルク港の公式サイト(ドイツ語)
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