発電における再生可能エネルギーの割合は、ドイツにおいて半分以上になっているといわれる。確かにそうだが、それは1年単位など時間的に長いスパンでみるからだ。
これを1日単位でみると、日ごとに再エネの割合が激しく変動しているのがわかる。1日単位の発電における再エネの割合は毎日、20%代から70%代の間で変動している。
その一番の原因は、風力発電による発電の変動が激しいからだ。
風力発電の変動は特に、11月から春にかけてより激しくなる。ちょうど今の時期だ。冬季に激しいといってもいいと思う。
風力発電の割合はこの時期、一桁代から70%代の間で変動する。現在ドイツはその変動を、主に石炭火力発電で調整して安定供給している。
しかし石炭火力発電が、発電電力量の変動を調整するのに適しているわけではない。それによって二酸化炭素が排出されるのも容認している。
それはなぜか?
石炭に火をつけるにも、燃えている石炭を消すのにも、時間がかかるからだ。
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ドイツ北東部シュヴェリンの「シュタットヴェルケ(都市電力公社)」では、近郊の農家から藁や家畜の糞を回収して、写真にあるドーム状のタンクで発酵させてバイオガスを発生させ、それを燃料にして再エネによる変動を調整するためにバイオガス発電を行っている |
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原子力発電の場合、緊急停止ボタンを押せば早く止めることができる。しかし再稼働させるには、準備にかなりの時間が必要となる。そのため、変動を調整するのには適さない。
再エネによる発電では、天候の変化によって早いテンポで発電電力量が変動する。
その早い変動のテンポに対応して、発電できるのはガス発電だ。ガスはすぐに点火できるし、すぐに消すこともできる。
ドイツでは現在、天然ガス発電とバイオガス発電も再エネによる発電電力量に対応して発電を調整している。しかしまだ、十分な発電容量がない。
ドイツから余剰電力を海底ケーブルでノルウェーに送電し、揚水発電された電気をノルウェーからドイツに戻すことができるようになっている。しかしその容量だけでは、まだまだ不十分。国内の蓄電池の蓄電容量も不足している。
それに代わって必要なのは、発電電力量の変動に応じて発電を調整する調整力として使われる発電所と、普段は待機していていざという時に発電する予備力として使われる発電所だ。
前述した理由から、ガス発電所が調整力ないし予備力として適する。
ガス発電を再エネ化するには、燃料としてバイオガスないし再エネ電力で製造された水素を使う。ただ水素を製造するにはたくさんの電気が必要になるので、エネルギー利用効率はよくない。再エネ電力の需要が急増するだけだ。
問題はさらに、調整力と予備力に使われるガス発電所が常に稼働しているわけではないことだ。そのため、発電して電気を売るだけではコストを回収できない。発電所の新設もできない。そのため電気を売る以外に、別の資金調達方法が必要になる。
今ドイツで計画されているのは、再エネ発電と連携する調整力と予備力に特化する「組み合わせ型容量市場」を導入することだ。それによって、電気を売るだけではなく、容量市場において発電所を維持、建設するための資金を集める。
そのための法案がすでに用意され、公開ヒアリングも行われた。しかし政府が少数与党となったことから、連邦議会(下院)が早期解散され、総選挙が行われる。選挙が終わって新政権にならないと、法案がどう取り扱われるのかわからない状況となっている。
(2025年2月05日)
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