ドイツは容量市場を選択しなかった
日本は4年後に、容量市場をはじめます。そのため、4年後に取引する市場規模額が決まりました。その約定総額は、約1兆6000億円。kW当たりの約定価格は、1万4000円/kW余りとなります。
これは、予想されたよりも、かなり高額になったといわなければなりません。
日本ではこれまで、電力大手が総括原価方式という計画経済的な制度の恩恵を受けてきました。そのおかげで、発電所の改造や新設に必要な投資コストなどの固定費を簡単に回収することができました。
しかし電力市場が自由化されたことで、その費用を電気を売るだけでは回収できなくなっています。またピーク電力の需要に合わせて電力を安定供給するには、常に運転するとは限らない発電所も所有していなければなりません。そのための発電所では、電気を売るだけでは経費をカバーできない可能が高いのです。
そこで、電気をkWh単位で売って利益を上げるだけではなく、発電所の発電出力をkW単位で市場化するのを容量市場といいます。
これは、発電が電気を売るだけでビジネスを展開する時代が終わったことを意味します。発電資金は今後、電気料金と発電容量で調達することになります。
ただそれでは、既存の火力発電所と原子力発電所を保有する大手電力ばかりが有利になります。発電所を持たない新電力や再エネ電力がやっていけなくなる危険も孕んでいます。
というのは、新電力も再エネ電力も容量市場に参加することを義務つけられています。でも発電所を所有していないので、容量市場から資金が還元されません。市場参入するためだけに、コストが発生します。
容量市場の仕組みでは、市場で集まった資金が発電所を持つ大手電力ばかりにいくことになります。
ドイツでも、容量市場の導入が検討されました。でもドイツでは、容量市場の導入を見送り、戦略的リザーブ(予備力)というものを設けることになりました。
これは、送電網の安定と電力の安定供給のために、リザーブ発電所としてキープしておいたほうがいい発電所を規定して、その発電所にその維持費が流れる仕組みをつくるものです。
ここでリザーブ発電所としてキープされるのは、主にガス火力発電所です。再生可能エネルギーによる発電では発電量に変動が大きいので、それに対応するにはすぐに発電を開始したり、止めたりすることのできる柔軟性のあるガス火力発電のほうが適するからです。
でもドイツはどうして、容量市場を選択しなかったのでしょうか。
それは、再エネへのエネルギー転換を図る過渡的な時期に、エネルギー転換の過程でいずれ廃止される原子力発電所や火力発電所に容量市場によって資金の流れる仕組みを造っても意味がないからです。
一旦新しい仕組みを造ってしまうと、それを止めてしまうほうが難しく、手間と時間がかかります。さらに、容量市場という仕組み自体が実際にうまく機能するのかどうかもはっきりしません。
むしろドイツでは今、将来再エネ発電施設のために容量市場に相当するメカニズムが必要になるのではないかと見られています。
それは、なぜでしょうか。
それは、再エネで発電された電力の取引価格が下がっていくばかりだからです。それではいずれ、再エネ発電施設を設置する魅力を失い、投資意欲がなくなる心配があります。
それでは、再エネ化が進みません。再エネ100%を目指すためには、今後再エネへの投資を促進するための新しいメカニズムが必要になります。
2020年11月01日、まさお
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