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「World Nuclear Industry Status Report」という世界の原発状況レポートが、毎年発表されている。レポートを作成しているのは、パリを拠点に活動するマイケル・シュナイダーさんら。
著者は世界各国に散らばっている。いずれも原子力産業や原子力ロビー、反原発活動家らの主張とは関係なく、中立的な立場から各国の統計公式データや専門家の論文など2500以上の参考文献をベースにして、原発の現状を専門的に把握する。
レポートの2025年版が公開された。レポートは2025年中頃までの状況をまとめ、2026年はじめに最新状況が追加されている。
メディアにおいては一般的に、原発が新設されるとニュースになりやすい。しかし脱原発を達成したドイツを除けば、原発が停止されてもニュースにはならない。
その結果、原子力産業や原子力ロビーの思惑通り、原発が増えて「原発ルネッサンス」がはじまっているという「物語」がつくられていく。しかし本当に、原発ルネッサンスの時代に入っているのだろうか。
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チェコのテメリン原発。同原発では、旧ソ連で開発されたロシア型加圧水型炉(VVER-1000/320)が稼働している。ロシア軍に掌握されているウクライナのザポリージャ原発と同型だ。現在ロシアが建設する原発は、その改良型。安全性は、最新の欧州加圧水型炉(EPR)に相当すると主張されている |
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「World Nuclear Industry Status Report 2025」によると、2024年全体で原子力発電された電力量は2,677 TWh。発電量全体の9%だった。原発発電量の割合のピークが1996年の17.5%だったことを考えると、原発の割合は現在、半分に減少している。
原発発電量が多いのは米国、中国、フランス、ロシア、韓国の5カ国。この5カ国で世界の原発発電量全体の73%を占める。
過去30年の10年ごとの新規稼働原発(正確には原子炉)と廃炉決定原発の数を見ると、1995 - 2004年が44基新設、37基廃炉と新設がわずかに多かった。それに対して2005 - 2014年は新設35基、廃炉54基と廃炉が俄然増えている。ただ2015 - 2024年はなると新設69基、廃炉47基と、新設が大幅に増える。しかしそれは、新設数の半分以上の37基が中国で設置され、中国では1基も廃炉となっていないからだ。中国を除く世界では、原発が15基減ったことになる。
2025年7月段階で世界では408基の原発が稼働していた。稼働原発数のピークは2002年の438基。現在ピーク時より稼働原発数が30基減っているのがわかる。
これで、「原発のルネッサンス時代」といえるのだろうか。
2025年7月時点で建設中の原発は63基。その内訳は、中国32基、ロシア7基、インド6基、トルコ4基、エジプト4基、韓国3基、バングラデシュ2基、英国2基、スロバキア1基、イラン1基、パキスタン1基となる。
それを原発を建設しているヴェンダーの国別に見ると、中国が29基、ロシアが27基で、2カ国で世界の90%近くの原発を建設している。
中国は国内で自国製原発を28基建設し、1基をパキスタンに輸出している。それに対してロシアは国内で自国製原発を7基建設しているにすぎず、残りの20基を輸出しているのが目立つ(中国、トルコ、エジプト、インドがそれぞれ4基、バングラデシュ2基、イランとスロバキアがそれぞれ1基)。
英国では仏独開発のEPR2基が建設され、韓国では自国製の原発が3基、インドではロシアから輸入する以外に、自国製が2基建設されている。
本サイトでは、ヨーロッパの原発のロシア依存について問題提起したが(「ヨーロッパの原発は対ロシアのアキレス腱」、「核燃料のロシア依存は問題ない?」)、原発のロシア依存がさらに世界に広がっているのがわかる。
中国国内でたくさんの原発が同時に建設されているのは、中国では安全基準のハードルが低いからであることも知っておかなければならない。そうでない限り、国内でこれほどたくさんの原発は同時に建設できない。
チェルノブイリ原発事故とフクシマ原発事故、ウクライナ戦争におけるエネルギーのロシア依存の教訓から、何も学んでいないといわざるを得ない。
(2026年1月26日) |