2026年4月16日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
脱原発したドイツは、原発拡大でロシアに加担するのか

ドイツ北西部にあるリンゲンには、原発用燃料棒を束ねる燃料集合体の製造工場がある。工場は、フランスの原子力関連企業フラマトム社(元アレヴァ)のドイツ子会社によって運用されている。


ここでは主に、西ヨーロッパで稼働する米国ウェスティングハウス社など西側メーカーの原発用に燃料集合体が製造されている。


ロシアからヨーロッパに輸入されるウランの割合は、全体の15%程度。ここで問題なのは、ロシアからのウランではない。ウランを濃縮して核分裂するウラン235の割合を高めるために(核分裂しないウラン238とウラン235を分離)必要となる六フッ化ウランのほとんどがロシアの国営会社ロスアトムから輸入されていることだ。


石油と天然ガスの化石燃料だけではなく、原子力発電においてもヨーロッパがロシアに依存していることがわかると思う。この点は、本サイトでも何回も指摘してきた(以下の関連記事を参照)。


もう一つの問題は、欧州連合(EU)に加盟している東欧諸国において旧ソ連製の加圧水型炉VVERが稼働していることだ。チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリアがそうだ。


そこで使われる燃料集合体は現在、ロスアトムから納入されている。この燃料集合体は西側の原発で使われる四角形ではなく、六角形と特殊な形をしているのが特徴だ。


この六角形型燃料集合体をロシアではなく、西ヨーロッパで製造できるように、仏フラマトム社と露ロスアトム社はジョイントベンチャーを設立した。それを脱原発したドイツのリンゲンにある燃料集合体工場で製造しようとしている。


東欧ではチェコのテメリン原発において、1990年代前半から旧ソ連製の六角形型燃料集合体を米国ウェスティングハウスで製造させ、ロシア依存から脱皮しようとした。


しかし数年間使用したが問題が多く、すぐにロスアトム社製に戻している。


ウクライナは2015年から10年かけ、ロシア製燃料集合体をウェスティングハウス製に切り替えることを模索。2025年にウェスティングハウス社とすべての燃料集合体に関して納入契約を締結した。


これまでのところEUは、ロシア製燃料集合体と六フッ化ウランを経済制裁の対象にして輸入させないということはしないと見られる。ヨーロッパにおいて、ロシア依存の下で原子力発電が行われているということだ。


エネルギーのロシア依存には常にリスクが伴う。それから脱皮するためには、原子力においてもロシア依存を解消しなければならない。


仏フラマトム社と露ロスアトム社がジョイントベンチャーを設立したのは、六角形型燃料集合体をロシアではなく、西ヨーロッパにあるドイツにおいて製造するためのものだ。脱原発したドイツが邪魔をしないように、ジョイントベンチャーはパリにおいてフランス法に基づいて設立された。製造のための研修もフランスで行われてきたという。


非常停止ボタン
旧ソ連製原発の訓練用原発中央制御室で赤い非常停止ボタンを押す

現在、世界で最もたくさんの原発を建設しているのは、中国とロシアだ(「世界で今、原発を増やしているのは誰だ?」)。


2025年7月時点で建設中の原発は63基。そのうち、中国が29基、ロシアが27基建設している。中国は国内で自国製原発を28基建設し、1基をパキスタンに輸出している。それに対して、ロシアは国内で7基建設しているにすぎない。残りの20基を輸出しているのが目立つ。中国、トルコ、エジプト、インドでそれぞれ4基、バングラデシュで2基、イランとスロバキアでそれぞれ1基となっている。


ドイツで六角形のロシア型燃料集合体を製造できるようになると、ロシアに対する経済制裁があろうがなかろうが、ドイツ製燃料集合体として世界中で稼働するロシア製原発に輸出できるようになる。


その結果、ドイツがロシアによる原発拡大に加担することになる。


独リンゲンで六角形型燃料集合体を製造する許可申請が、すでにドイツに提出されている。国の安全審査機関は審査を終え、その結果をリンゲンのあるニーダーザクセン州に送ったとされる。


連邦制のドイツでは、原子力関連の案件を許可するのは国ではなく、立地州だ。今回は、リンゲンのあるニーダーザクセン州の管轄となる。その担当大臣は緑の党の大臣。


新しい六角形型燃料集合体の製造を認めるか、認めないか。それを法的に拒否する手立てはないと見られる。問題は、安全か安全でないかだけ。安全でないと判断されても、安全性の改善を求め、単純に拒否することはできない。


後は、政治判断となる。


フランスとスペイン、ドイツで新しい戦闘機を共同開発するプロジェクトFCASにおいて、独仏の間で軋轢があり、独仏関係に亀裂が入っている。そのため、ドイツ側は国としてリンゲンの問題でフランスの機嫌を損ねたくないともいわれる。


かといって、ロシアの技術がドイツに入るのも困る。それと同時にロシアからの人の出入りが増え、ロシアがドイツでスパイ活動やサイバー攻撃などのサボタージュを拡大する可能性も一緒に入ってくることが考えられる。その不安は大きい。


しかし地元リンゲンの町議会はすでに、賛成多数で六角形型燃料集合体製造に同意した。製造工場では、約400人が雇用されている。町では2023年末、エムスラント原発がドイツ最後の原発の一つとして最終停止している。町にとって雇用を維持、拡大するには、燃料集合体工場は重要だ。


フラマトム社は、2030年までにライセンス生産を開始したいとする。しかし最終決断するのは、ニーダーザクセン州緑の党のマイアー大臣。緑の党の大臣には、原発拡大でロシアに加担したくないという思いもあるはずだ。


しかし、どういう「Deal」が考えられるのか。


いろいろ複雑な義務事項を付帯させて、許可を出すのを遅らせる手はあると思う。しかしそれは、許可を先送りするだけにしかならない。


脱原発したドイツだが、その時に原子力発電と再処理だけを放棄し、ウラン濃縮(ドイツ北西にあるグローナウで英国ウンレコ社)と燃料集合体製造(リンゲン)を脱原発の対象にしなかったツケが、ここにきていろいろな要因の絡む複雑な問題を引き起こしているともいえる。


(2026年4月16日)
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関連サイト:
仏フラマトム社の独リンゲン燃料集合体工場のページ(ドイツ語)
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