2026年6月02日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
ドローンによるザポリージャ原発の穴とIAEAグロッシー事務局長の発言

ウクライナ侵攻戦争でウクライナのザポリージャ原発がロシアの管理下に置かれて、4年以上が経った。


この間ザポリージャ原発をめぐり、いろいろ報道されてきた。最近では5月末に、ザポリージャ原発がドローンで攻撃され、原発に穴が開いたと報じられている。


正確には、原発のタービンなどが設置されている機械棟の壁に穴が開いたという。ウクライナとロシアは互いに相手方による攻撃だとし、どちらの攻撃によるものか確認しようがない。どちらの情報も信用してはならない。


世界の原発を監視する国際原子力機関(IAEA)もこの事件を確認し、現地に派遣してある職員が現場を視察できるようにすることを求めた。


テメリン原発
チェコのテメリン原発では、旧ソ連で開発されたザポリージャ原発と同じロシア型加圧水型炉(VVER-1000/320、英語翻訳ではWWER)が稼働している

機械棟の壁に穴がありたということは、原子炉格納容器に穴が開いたわけではない。ザポリージャ原発の原子炉は、前掲写真のチェコ・テメリン原発の原子炉のように、格納容器で保護されている。機械棟はその格納容器に隣接している。


原子炉が加圧水型炉なので、原子炉からタービンに流れる蒸気は原則として、放射性物質には汚染されていない。蒸気が核燃料集合体と接触しないからだ。蒸気は原子炉内にある蒸気発生器から流れてくる。


そのため、機械棟は放射線や放射性物質の管理が必要な管理区域でない場合が多い。


ただVVER-440型炉の前身であるソ連旧式の加圧水型炉VVER-440では、本来汚染されていないはずの蒸気発生器が汚染されていたこともある。その点は要注意だ。


ぼくが問題にしたいのは事件後、IAEAのグロッシー事務局長の発言が報道機関によっては大幅に削除して簡潔にし、事務局長が「憂慮している」としか報道していないことだ。


「憂慮している」とあれば、何に憂慮しているのかが重要なポイントだ。報道が機械棟の壁に穴が開いたことに憂慮しているように誘導されているようにも感じる。


しかしぼくは、その記事にあるIAEAグロッシー事務局長の発言は、壁に穴が開いたことに憂慮しているのはなく、戦争において原発がドローンの標的になって破損したことに憂慮しているのだと解釈した。戦時では、また原発が標的となる。グロッシー事務局長は、その戦略の姿勢に憂慮しているのだ。


グロッシー事務局長のような原子力の専門家が、機械棟の壁に穴が開いただけで大騒ぎするはずがないと思ったからだ。


他の報道機関の中には、事務局長の発言をしっかり引用しているものもあった。それを読むと、事務局長の発言の内容はぼくが解釈した通りだった。


問題は、グロッシー事務局長の発言の引用の仕方にあった。ただ通常、ニュース報道では簡潔さとわかりやすさが追求される。しかしその場合、簡潔すぎてそう意図していなくても、内容が大袈裟になってしまうことがあるのも事実。特に原発問題に関しては、原発のことをよく知らないで報道している場合が多いので、報道する側も報道した内容のどこに問題があったのかもよく理解されていない。


実は、これが原発に関する報道の現実である。こうして意図するしないに関わらず、原発に関して過剰報道が起こっている。その結果、直前に起こった事件の危険ばかりが注目され、不安が拡大していく。それでは、IAEAのグロッシー事務局長が指摘する事件の本質的問題が忘れられてしまう。


原発のことをよく知らないと、こうした過剰報道に踊らされて不安が増長してしまう。ネット化された社会では同じ事件の報道をいくつも見つけることができるので、一つの報道だけを信じるのではなく、報道をいくつも比べて、自分でどれが一番信用できるか冷静に判断したい。


(2026年6月02日)
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関連サイト:
国際原子力機関(IAEA)の公式サイト(英語)
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