2026年1月31日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
排熱の利用をシステム化する

これまでサイトでは何度となく、発電よりも暖房や給湯に必要な熱供給をどう脱炭素化するかのほうが難しいと書いてきた。


ドイツでは将来、この問題を解決する方法の中心になるのは、ヒートポンプと地域暖房熱供給システムだと見られている。


ドイツでは、地域毎に熱を集中的に供給する地域暖房熱供給システムが普及している。たとえば発電所の排熱をそれに利用すれば、電力と熱を並行して供給することができる(コジェネレーション・システム)。


本サイトではたとえば、ハンブルク港周辺で排出される排熱を回収して熱供給に利用するため,、港周辺に大規模な地域暖房熱供給システムが建設されていることを紹介した(「都市の熱供給をどうする?」)。


将来の熱供給で課題になるのは、産業活動などによって排出される排熱をいかに効率よく熱供給に利用するかということでもある。


エネルギー効率とエネルギーサービスに関するEU(欧州連合)指令(2006/32/EC )を国内で実施するため、ドイツは経済省下のドイツ経済輸出管理局内にエネルギー効率センターを設置した。同センターでは「排熱プラットフォーム」を設け、排熱を排出する企業を登録することで排熱を利用するための排熱情報を提供している。


排熱プラットフォームへの登録を義務化しているのは、年間の総熱利用量が2.5GWhを超える企業。プラットフォームには2025年はじめの段階で、3800社以上、6500カ所以上、2万6000件以上の排熱利用の可能性に関する情報が公開されている。年間の総排熱量は254TWhになる。


登録されている排熱の約60%は25度から60度の排熱で、その81%が四六時中いつも排熱が排出されているという。


排熱を地域暖房熱供給システムに利用するには加熱しないといけないが、排熱を利用することで省エネできる。


現在、将来の排熱利用で注目されているのは、サーバーなどが集まるインターネットデータセンターから排出される排熱だ。従来のAIからさらに生成AIがより普及している現在、インターネットデータセンターの需要は益々高まるばかり。そこから出る排熱を利用しないのは非効率だ。


たとえばドイツ西部プランクフルト(マイン)では、インターネットデータセンターからの排熱を加熱して集合住宅地帯の熱供給に使うプロジェクトとして「フランンキー(Franky)」プロジェクトと「ハッタースハイム(Hattersheim)」プロジェクトが実施された。


プロジェクトを開発、実施した地元のエネルギー供給会社マイノヴァ(Mainova)社によると、既存のデータセンターよりは、新設されるデータセンターと住宅地帯を連結させるほうが実現しやすいという。


今後インターネットデータセンターがどんどん増えてくるのは間違いない。それだけに、期待の持てる排熱利用システムだ。


将来案件としてもう一つ注目されているのは、水素製造プラントからの排熱を利用することだ。


脱炭素化を実現するためには、水素が必要不可欠だ。水素の製造にはたくさんの電気を使い、その分コストもかかる。一般的には、大型プラントで一度にたくさんの水素を製造するほうが製造コストの削減につながると見られている。


それに対して、水素製造を小型化、分散化して水素を地産地消化し、その排熱も地元で熱供給に利用した方が効率がいいのではないかという見方もある。そのためのパイロットプラントを開発、設置して試験するプロジェクトがドイツ東部ツィッタウではじまっている。


水素は地元において再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力を使って製造し、グリーン水素を燃料にして発電すれば、その排熱で地元で排出される排熱をさらに加熱して、地域暖房熱供給システムに熱供給する。


そうすれば、水素の輸送に長大な配管網を必要としないし、脱炭素化を分散して実現しやすい。


いずれも将来の技術革新を考え、新しい技術から排出される排熱をシステム的に利用して脱炭素化においてエネルギーを効率利用しようというプロジェクトだ。


(2026年1月31日)
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関連リンク:
ドイツ・エネルギー効率センターの「排熱プラットフォーム」(ドイツ語)
「フランンキー(Franky)」プロジェクト(ドイツ語)
「ハッタースハイム(Hattersheim)」プロジェクト(ドイツ語)
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