熱改革の主体は自治体
これまで熱供給を再生可能エネルギー化する方法について書いてきました。ぼくはそこで、産業界における水素の莫大な需要を考えると、熱供給に水素を使うべきではないと書きました。
これは、水素からメタンを製造して熱供給を産業化することを否定することにもなります。既存の天然ガス網も不要になります。
そういうと、バイオガスがあるではないかと思うかもしれません。バイオバスは、天然ガス網を使って配給できるはずです。でもバイオガスは、バイオガス発電を調整力として利用できるようにする唯一の再エネ燃料です。バイオガスを熱供給用に使うのではなく、バイオガス発電による排熱だけを熱供給に利用し、その排熱をバイオガス発電施設周辺の地域に地域熱源として供給すべきです。熱供給だけを目的に、バイオガスを燃料とするのは避けるべきです。
そうなると天然ガス網は、いずれ不要になります。ドイツではすでに、天然ガス網をいつ廃止して、その後どうするかの議論もはじまっています。
これまで、熱供給を再エネ化する個別の方法について述べました。しかしそれだけでは、熱供給は機能しません。熱供給を効率よく機能させるには、再エネ化された熱供給をシステム化しなければなりません。
そのためには、地元においてエネルギー源となるものを把握し、それを効率よく利用することを考えます。地元の環境と与えられた条件に応じて、適切な熱供給システムを計画します。
ですから熱供給において、全国や大きな地域で統一できる方法はありません。都市と田舎において、熱供給を同じ方法で実現できるはずもありません。その点で熱供給を再エネ化する熱改革は、地元の条件を熟知している自治体中心に行うしかありません。自治体の規模に応じて、自治体が地区毎に適切な熱改革計画を立案することが必要になります。
熱供給においては、再エネによる発電以上に、分権化、分散化が求められます。
自治体毎、さらには自治体の地区毎に熱改革をより効率よく実施していくには、熱改革を実現するステークホルダーによる情報公開と情報交換がとても大切になります。それによって、お互いがどうすれば効率よく熱改革を実現できるのか、一緒に学んでいくことができます。
熱供給は、二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現する上で、一番難しい課題になります。その課題を実現するのが共通の課題だとすれば、ステークホルダーそれぞれが情報をオープンにするのはそのための大前提になります。
それぞれ自治体の取り組みの中から、いろいろなベスト・オブ・プラクティス(最も優れた実践方法)が出てくるのは間違いありません。そこから次の自治体、地区が、新たな熱改革について学んでいけます。
2021年12月13日、まさお
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関連サイト:
自治体熱改革(Kommunale Wärmewende)のサイト(ドイツ語)
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