熱のことを忘れないで

 脱炭素社会のことが、いろいろ話題になるようになりました。脱炭素社会を実現するには、二酸化炭素の排出を実質ゼロにしてカーボンニュートラルを目指します。

 ただここで、ちょっと気になることがあります。それは熱です。脱炭素というとどうしても、まず発電をどうするか議論されます。発電では、エネルギー源を再生可能エネルギーに切り替えます。再エネで発電された電気で電気自動車を走らせれば、交通でも脱炭素化を実現できます。

 産業では、水素を基盤にして『技術転換』しなければなりません。その水素を再エネ電力を利用して製造すれば、産業でも脱炭素化が可能になります。

 ここまで見るだけでも、再エネ電力と水素の需要が莫大に増えることがわかります。そのことは、本サイトの「再エネいろは」でも見てみました(「脱炭素社会では電力が中心になるのか?」)

 ここまではすでに、いろいろ議論されています。どうすべきかの方向性も見えてきました。しかし熱供給の問題は、まだ先が見えません。

ドイツ南西部のジムマーンでは、住民が庭で集めた木の枝などの生物資源を回収して、地域暖房熱源として燃やして熱を供給する。そうすれば、カーボンニュートラルだ。写真は、それら生物資源の保管場

 ドイツには再生可能エネルギー熱法があり、熱供給の再エネ化を法規制によって進めようとしています。しかし熱供給の再エネ化は、なかなか進みません。ドイツでもこの状態なので、エネルギー供給では主として発電のことしか考えていない日本では、もっとこの問題が疎かにされています。

 「熱」とは、熱い熱と思いがちです。でも冷たい熱も熱なのです。「熱」というと本来、暖かい熱と冷たい熱の両方を考えなければなりません。特に地球温暖化で気温が高くなってきているだけに、夏の冷房に必要なエネルギーをどうするかを考えるのは、たいへん重要な課題になってきました。

 日本のように冷房をエアコンに集中させると、エアコンから発せられる熱で気温がさらに上がってしまいます。それでは、問題が大きくなるばかりです。

 ぼくはカーボンニュートラルを実現する上で、熱供給のグリーン化が一番問題になるだろうと思っています。熱供給でカーボンニュートラルが失敗する危険も高いと思っています。

 それは、熱供給において脱炭素化を実現するには、発電や交通、産業よりももっといろいろな要因について考えなければならないからです。しかし社会はそれに対して、ほとんど準備ができていません。でもカーボンニュートラルを実現するまで、30年もありません。それでいて、熱供給のグリーン化は可能なのでしょうか。

 ぼくたちは、熱供給という難題をどう解決すればいいのか。このブログではこれから、この熱の問題をいろいろ議論していきたいと思います。

2021年10月10日、まさお

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関連サイト:
アゴーラなど環境シンクタンクが共同で作成したドイツがカーボンニュートラル化するための戦略案(ドイツ語)

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