2026年5月21日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
菜種油化学コンビナートで脱炭素化を実現

イラン戦争で石油やガスの化石燃料のほか、原油から得られるナフサなどの原料の安定供給が揺らぎ、世界経済に大きな影響を与えている。


世界各国は、2050年を目処に脱炭素化を目指している。イラン戦争の影響で、脱炭素化の基盤となる脱化石燃料化をできるだけ早く実現する必要があることがより実感されることを期待したい。


脱炭素化では、再生可能エネルギーへの転換が必要となる。しかし脱炭素化は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーで発電すればそれで済む問題ではない。


脱炭素化を進めないといけないのは、発電と輸送であることは気づきやすい。しかしぼくたちの生活は、至る所で石油に依存している。一番目につきやすいのは、プラスチックだ。


しかしそれだけではない。たとえば石鹸や化粧品、インキなども石油なしには考えられない。これは、化学産業も脱炭素化しないといけないということでもある。「石油化学コンビナート」ということばを見ればわかるように、化学産業がいかに石油に依存しているか想像がつくと思う。


発電や輸送では再エネ化が進んでいるが、化学産業の脱炭素化はほとんど進んでいない。化学産業はどうすれば、脱炭素化できるのだろうか。


水素とアンモニアを使えばいいとよくいわれる。しかし水素とアンモニアを製造するには、莫大は電気が必要だ。それでは、いくら電気があっても需要を満たせる保証はない。再エネで発電してその需要を満たせるのかどうかも疑問だ。


化学産業を脱炭素化するため、ドイツで今注目されているのは菜種だ。菜種を原料としていろいろな製品ができるのは、「菜種は貴重な原材料」ですでに書いた。


菜種から菜種油をつくって原料にする。要は、植物油を原油の代わりに使うということだ。栽培地がドイツより北のひまわりの種でもいい。しかしウクライナ戦争の影響でウクライナからの輸入量が減ったことから、ドイツ国内で生産量の多い菜種に白羽の矢が立った。


原油ではなく植物油を使えば、石鹸、歯磨き粉、化粧品や食料品、薬に使えるほか、最終的に残った残渣を肥料や飼料としても使える。その結果、石油より用途が俄然拡大する。


菜種油を原油の代替にして、菜種油化学コンビナートをつくろうとしている企業がある。ヴェルビオ社で、ドイツ東部のシュヴェートとビッターフェルトに拠点をおく。


いずれも旧東ドイツ時代に、石油精製コンビナートと化学コンビナートのあったところ。当時コンビナートとは、石油を精製し、その過程で残った残渣をさらに何回も精製して新しい製品をつくるためにネットワーク化された巨大な工場地帯だった。


ヴェルビオ社は現在、シュヴェート工場ではガソリンの代替となるバイオエタノールの生産を中心としている。ビッターフェルト工場では、菜種油を基盤にして新しい脱炭素化された化学コンビナートをつくり、コンビナート内で何社とも連携していきたいという。


菜種油は、バイオディーゼルにすることからはじまる。そのプロセスで、ニトログリセンリンを得ることができる。バイオディーゼルをさらに精製してステロールを生産する。それによって新しい製品をつくる可能性が広がる、それによって残った残渣をさらに何回も精製してさらに新しい製品を生産する。


しかしヴィルビオ社ではまだ、ステロールを生産するまでの段階。その後については今後の課題となる。最終的には菜種油をベースとした化学コンビナートを実現して、脱炭素化に貢献したいとする。


ヴィルビオ社によると、同社はまだパイオニア的な存在で、同社の試みが業界で受け入れられたというまでには至っていない。ビジョンに賛同する企業のサポートなしには、続けられない状態であるという。


しかしヴィルビオ社のように、将来ビジョンなしには化学産業で脱炭素化を達成できないもの事実。ヴィルビオ社にはビジョンを貫徹して、脱炭素化された化学コンビナートを実現してもらいたい。


(2026年5月21日)
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関連リンク:
ヴェルビオ社のサイト(ドイツ語)
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