地方交通をどう維持するのか?

 生活する上で大切なのは、地元で移動するための足です。ただ、人口の少ない地域ほど、利用客が少ないので、公共交通でもやっていけません。そうなると、自家用車に頼らざるを得なくなります。あるいは、人口がさらに減って過疎化します。

 大都市では家賃が上がる一方なので、郊外で生活して、時間をかけて通勤しなければならなくなります。都市に向かう公共交通は混雑し、通勤に自家用車を使えば、大都市では渋滞が起こります。通勤による疲労も増大します。

 過疎化や交通渋滞、それに伴う公害の問題は、社会構造や交通整備の問題とも密接に関係しています。さらに、これらの問題はエネルギー消費にも影響を与えます。

 交通の問題では、憲法で保障されている平等と公平さをどう実現するかもとても大切な課題です。過疎であっても、市民が移動できる公共交通をどう提供するのか。都市と過疎地で、移動するのに大きな格差があってはなりません。

 そのため、地方自治体などが地元の公共交通を維持するために補助金を出したりしています。それで運用されているのが、たとえば日本の第三セクターです。

 新幹線のような長距離鉄道は、経営が楽です。むしろ、地元の中近距離交通をどう整備して、魅力ある交通システムを提供していくのか。それが、地方を活性化させるポイントでもあります。地方においても、市民が自家用車ではなく公共交通を使えば、省エネ効果も高まります。

 単に公共交通を公営化しても、赤字経営になるのは過去の経験からわかります。公共交通にどう競争の原理をもたらし、効率と質を改善するのか。それが、大都市集中化を緩和する上でも、とても重要な課題になっています。

 たとえば、ドイツの首都ベルリンでは今、これまでドイツ鉄道の子会社によって運用されてきた都市鉄道交通(Sバーン)をどう改善するかが、大きな問題になっています。ドイツ鉄道のコスト削減戦略で車両のメンテナンスが不十分となって認可が下りず、使うことができなくなりまりました。そのために、長い間車両を走らせずにメンテナンスしていたことがあります。それで車両不足になり、運休を避けるため、混雑するのを覚悟で短い編成で走らせていました。

 そこで考え出されたのが、機関車、車両など輸送に必要なハードウェアを自治体が税金で購入し、そのメンテナンスと運転する会社を別々に入札で選ぶという方法です。こういう手法は、すでにドイツ北西部の二ーダーザクセン州で90年代に導入されています。それによって、単に補助金を出すよりも、サービスの向上ばかりでなく、コスト削減効果も生まれていることがわかっています。

 税金で車両を購入するということは、車両が公共所有ということになるので、平等性、連帯性も高まります。

 大都市集中化を防ぎ、地方分散化を進める上でも、公共交通の整備、拡充が大切です。全体として見ると、それが大都市での公害を軽減し、省エネ効果をもたらします。また、地方分散化で長時間通勤する必要がなくなれば、生活環境も向上します。

2018年11月11日、まさお

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