省エネというごまかし

 ヴッパータール研究所は、日本ではドイツの環境政策のシンクタンクとして有名です。たとえば、地球温暖化対策の一つとして環境税の導入を提案しました。

 元所長のペーター・ヘンニッケ教授が環境問題の会見で、「日本の省エネ技術は最先端で、とてもすばらしい」と絶賛したことがあります。ただぼくはその後で教授に、確かに日本の省エネ技術はすばらしいけれど、日本では本当に必要なのかと疑いたくなるような製品がたくさんあるので、そのために省エネしても、全体としてたくさんのエネルギーを使っているので省エネにはなっていないと説明しなければなりませんでした。

 たとえば、日本ではやたらたくさんの飲料物の自動販売機がありますが、それ本当に必要ですか。それから、あんなにガンガン冷やしてある必要ありますか。そのために、電気を使っていますよ。

 その点、ドイツの省エネ技術は日本の技術からすると遅れていると思います。でも日本と比べると、ドイツには不要だと思われるものが少ないと思います。その点では、ドイツのほうが合理的だと思います。

 いくら省エネが売りでも、それによって電気などのエネルギー消費が増えてしまっては意味がありません。省エネは、全体に使うエネルギーが減ってこその省エネです。

 さらに日本で気になるのは、関連省庁や電力会社などの宣伝にやたらと「資源を有効的に利用するために省エネしましょう」と謳われていることです。

 ここでいう「資源」とは、主に石炭や石油など化石燃料のことです。さらに「(それを)有効的に利用する」とは、どういう意味でしょうか。

 それは、石炭や石油などの化石燃料は有限なので、使う量を減らしましょうという意味です。一見、合理的なように思います。

 でも、考えてみましょう。

 化石燃料を使う量を減らしてどうなりますか。化石燃料を使う期間が延びるだけです。化石燃料は有限なので、発電や自動車に使っている燃料をできるだけ長く使えるようにしましょうといっているにすぎません。ということは、省エネしようがしまいが、化石燃料が枯渇するまで使えば、消費してしまう化石燃料の全体量に大きな違いはありません。

 ということは、どういうことでしょうか。

 省エネしようがしまいが、化石燃料を燃やすことによって排出される排ガスの全体量も変わらないということです。この排ガスが公害や温暖化の原因になっているのはよく知られています。

 こうして見ると、関連省庁や電力会社が「省エネしましょう」といっているのは、ちょっとグロテスクではないですか。省エネしても、化石燃料を使う期間が延びるだけの話です。何か、電力業界や自動車業界を延命する宣伝文句のようにも聞こえてなりません。

 もちろん、その間にできるだけはやくクリーンなエネルギーに換えましょうというのであれば、意味があります。でもそれをはっきりと目標としないで「省エネしましょう」では、市民を騙していませんか。

(2019年3月03日、まさお)

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