再エネの基盤はデジタル化
このブログを含め、ベルリン@対話工房のサイトではこれまで、再生可能エネルギーについていろいろ書いてきました。
ただ一つ、再エネに関してとても重要なことを書いていないことに気付きました。それは何でしょうか?
再エネによる発電電力量をいくら増やしても、再エネ100%化は達成できないということです。再エネ発電では、発電電力量に変動があります。それをうまく調整しながら、電気の安定供給を維持しなければなりません。
そのためには、再エネによる発電部門においてシステム化して、自動制御することが求められます。そのシステム化には、再エネを基盤とした電力供給システム全体をデジタル化することが大前提になります。
ここで「調整」とは単に、発電分野においてだけ電気を効率よく利用することではありません。電気はエネルギーの他の部門と調整して、より有効に使うことが求められます。たとえば、電気が水素を製造し、エネルギーを水素として貯蔵します。その水素はたとえば、水素自動車や燃料電池の燃料になります。産業界でも重要な資源となります。電気で水を加熱して、温水を暖房に使うことができます。必要に応じ、温水を貯蔵しておくことにもなります。
一部の事例を示しただけですが、再エネで発電された電気を電気部門だけで使うのではなく、交通や熱供給と連携して、電気をエネルギー源としてより柔軟に使います。それをセクターカップリングといいます。
エネルギーを電気、熱、交通でシェアして、効率よく利用するということです。それをすべて、自動で行います。
自宅の屋根のソーラーパネルで発電された電力量は自動で把握され、自宅での需要と蓄電池での蓄電量、系統の状況などに応じて、自宅で蓄電するか、系統に売電するか自動で判断されます。系統に売電した場合、売電量が把握され、配電会社に自動請求されます。
電気自動車を使っている場合も、翌日自動車を使う時間を事前に入力しておけば、電気自動車にはそれまでに蓄電されています。
暖房にヒートポンプを使っておれば、ヒートポンプには、自宅のソーラーパネルで発電された電気が供給されます。ヒートポンプは、室温が常に設定された温度に維持されるように制御されます。
自宅には、エネルギーシステムの操作パネルが各階にあるほか、外出していても、スマートフォンですべての自宅のエネルギーデータを閲覧できるほか、各装置もスマートフォンで遠隔操作できます。
これは、個人住宅における事例にすぎません。電力システムとセクターカップリングにおいて、エネルギーのシェアがすべて、自動で行われます。
そのためには、社会が隅々に渡ってデジタル化されていなければなりません。
今ドイツでは、光ファイバーケーブルが積極に敷設されています。それは単に、インターネットなどIT通信のためだけではありません。大手電力会社が光ファイバーケーブルによってエネルギー供給をシステム化するためでもあります。電力大手はそれとともに、通信事業にまで参入することを考えています。
ドイツ電力会社の最大手E.on社が2018年に発電部門をすべて売却ないし分割して再々編された時、当時のヨハネス・タイセンCEOが「今後は、エネルギーのシステム化と配電事業が電力会社のメイン事業になる。そのため、光ファイバー事業にも参入する」といっていたのを思い出します。
E.on社では現在、マイクロソフト社からリクルートされた女性がデジタル化担当の取締役となっています。
再エネとデジタル化は今、切っても切り離せない関係にあります。再エネをデジタル化する。それが、将来の技術革新のポイントにもなります。E.on社がそれを見越し、他社に先駆けて先手を打っていたことになります。
2022年1月30日、まさお
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関連サイト:
E.on社のサイト(英語)
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