前回、バイオマスで発電された電力の固定価格が高いのは、調整力として使われているからだと書きました。この点について、もう少しはっきり説明しておきたいと思います。
ドイツではバイオマスによる発電は、バイオマスを発酵させてガスを発生させ、そのガスを燃焼させて発電するバイオガス発電しか行われていません。
バイオマスを固形燃料として燃焼させて発電すると、発電コストが高いのと、石炭火力発電と同じように発電量を調整しにくいからです。石炭やバイオマスのような固形燃料では、火をすぐに消すことができません。
ドイツでは、バイオマスを燃焼させて熱を発生させ、その熱を地中に埋められた配管で供給して暖房用に使います。
バイオマスの発電コストが高いのは、燃料となるバイオマスを回収、処理するのにコストがかかるからです。限界費用が発生するということです。同じ再生可能エネルギーでも、燃料を必要としない風力発電や太陽光発電所とは異なります。だからバイオマス発電は、ベースロード電源として競争力がありません。
バイオマスの発電コストが高いという欠点を補うため、日中に電力の需要に応じて足りない電力を補充する調整力として使います。でも、バイオマスを固形燃料として燃やしていては、需要を補う調整力として電力を柔軟に供給することができません。
発電を柔軟に調整するには、ガスで発電したこうが簡単だし、より効率的です。ガスは供給をストップすれば、すぐに発電を止めることができます。
だからドイツでは、バイオマスを固形燃料として燃焼させて発電することはせず、バイオマスからバイオガスを発生させて、そのガスを燃焼させて発電します。
そのほうが、調整力の需要が少ない時に発生したガスを貯蔵しておき、需要の十分にある時だけそのガスで発電することができます。
調整力として使われる電力は、ベースロード電力として取引される電力よりかなり割高で取引されます。その分、取引価格もより変動しやすくなっています。
その影響にも関わらずバイオマスを普及させるには、バイオマスで発電された電力の固定価格を引き上げ、バイオマスで発電することに魅力を持たせなければなりません。
その分バイオマスの固定価格は、より高く設定せざるを得ません。
(2019年11月20日)
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