ドイツでは自家用車が将来、主に電気自動車に代わっていくのは間違いないと思う。それに対して、バスやトラックなどの大型車では、水素を燃料とする燃料電池車となる可能性が高い。
ただドイツでは一時、アブラナで製造されたバイオディーゼルが普及して、それが自動車の燃料として急速に普及した時期もあった。ただそれによって、食用農地がアブラナ栽培に転用されるなどした。そのため、アブラナによるバイディーゼルの製造を制限。代わって、植物油の廃油などからバイオディーゼルを製造することが促進されてきた。
バイオディーゼルは現在、ディーゼル機関車やコジェネレーションシステム(熱電併給)の燃料などにも使われている。
それと並行して、サトウキビやトウモロコシから製造されるエタノールをガソリンに混合して、動力燃料の脱石油化を進める。ただドイツでは、エタノール混合ガソリンが消費者のアクセプタンスを得られず、苦戦が続いている。
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ガソリンスタンドの料金表。E10は、エタノールが10%混合されたガソリン |
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サトウキビやトウモロコシなどバイオマスを原料としてバイオマス燃料を製造するのは、石油産業が脱石油後に生き残る上でとても重要だ。ドイツ国内でもすでに、エタノールなどを製造するバイオ精油工場が稼働し、その切り替えが進められている。
実際ドイツの産業界では、バイオマス燃料を拡大、普及させたいという意欲も強い。そうすれば、自動車産業や給油産業も大きな構造改革をしないまま生き残ることができる。
ただここには、水素と同じ問題がある。
将来再エネで発電された電力が主流となる電力中心社会になることを想定すると、電力はできるだけ効率よく利用したい。ただ電力で燃料を製造していては、電力を効率よく利用することにはならない。電力はできるだけ、最終的な動力源とするか、部品や最終製品を製造するために使いたい。
となると、バイオマス燃料を電気で製造するのは非効率となる。もちろん、バイオマス油やガスがどうしても必要になる分野があるのは確かだと思う。そういうところでは、バイオマスによる製造が優先されなければならない。
もう一つの問題は、バイオマス燃料を製造するのに必要なトウモロコシやサトウキビ、アブラナなどの原料を栽培するために、森林が伐採されて農地にされてはならないということだ。
そうなると、バイオマス燃料を燃焼させて発生する二酸化炭素を吸収してくれる樹木が失われる。それでは、二酸化炭素の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルは達成できない。
ドイツバイオマス動力燃料産業協会(VDB)のバウマン事務局長は、それを避けるため、持続可能性について認証された原料しか使わないと公言していた。でもそれがどれくらい実現可能なのかどうか、ぼくにはとても疑問だ。
ドイツの業界が持続可能性の認証を求めるといっても、ブラジルで次から次に森林が伐採されて農地に転用されていては、認証制度の意味がない。
飛行機の燃料としては、バイオマス燃料が今後、注目されていくのは間違いない。ただバウマン事務局長は、それだけでは業界を支えていくには需要が少なすぎると疑問を呈した。
再エネの普及とともに、従来の産業がとても厳しい現実に直面している。
(2020年11月14日)
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