2024年1月11日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
ドイツでも電気自動車用全固体電池の実用化直近

世界中で、電気自動車の次世代バッテリーとして期待される全固体電池の開発と量産化を目指して競争が激化している。


ドイツの自動車大手フォルクスヴァーゲン社は2024年1月3日、全固体電池セルの数カ月に渡る長期耐用試験をドイツのザルツギッターの実験上で行い、期待以上の成果を挙げたと発表した。


全固体電池を開発しているのは、フォルクスヴァーゲン社の電気自動車用に蓄電池を開発している子会社PowerCo社。米国ベンチャー企業QurantumScale社と共同開発している。


耐用試験では、1000回を超える充放電を繰り返してもセルは劣化せず、95%以上の蓄電容量を保持したという。これは全体で約50万キロメートルの走行距離を意味し、電気自動車の欠点である走行距離の短さを大幅に改善することになる。


全固体電池では、液体電解質を使うこれまでのリチウムイオン電池と異なり、溶媒として水溶液などの液体を使わず、不燃性の固体電解質を使う。そのため、電解質が蒸発したり、分解したり、漏れたりして発火する心配がない。耐熱性も高く、電気化学的安定性も高いことから、エネルギー密度の高い電極材料を使うことができるようになる。


その結果、容量を大きくして出力を高くすることができ、耐熱性の電池が可能となる。急速充電が可能となり、寿命も長く、蓄電池の低コスト化にもつながる。


フォルクスヴァーゲン社は現在、独ザルツギッターで最初の全固体電池製造パイロットプラントを建設中で、今年2024年末までに完成する予定。同工場ではその後、2025末までに製造容量を引き上げ、さらに量産体制に入るようにする。


製造はすべて、再生可能エネルギーで発電された電力で行うという。


フォルクスヴァーゲン社は2030年までに、ヨーロッパで6つの蓄電池製造工場を建設する計画で、ヨーロッパ全土で全固体電池の量産体制に入る。


ドイツではその他、BMW社が米国のベンチャーSolid Power社と提携して、ドイツ南部ミュンヒェン郊外のパルスドルフに全固体電池製造のパイロットプラント建設する予定。全固体電池を搭載する試作車も、今年2024年中に発表したいとしている。


(2024年1月11日)
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関連リンク:
フォルクスヴァーゲン子会社PowerCoのサイト(英語)
フォルクスヴァーゲングループの関連プレスリリース(英語)
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