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日本は「原子力明るい未来のエネルギー」のスローガンの下、原発をがんがん建設し、運転してきた。2011年3月の東日本大震災に伴う福島第一原発事故前には、50基以上の原子炉が稼働していた(定検停止中、点検停止中を含む)。
あれから15年。現在、原子炉は10基余りしか稼働してない。事故原発周辺では、依然として帰還できない区域が残っている。
帰還困難区域の福島県双葉町では、「原子力明るい未来のエネルギー」の看板は撤去された。しかし日本は、原子力が未来のエネルギーではないことを理解したのだろうか。
日本政府は2023年12月にアラブ首長国連邦のドバイで開催された国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)において、米国のイニシアチブで出された「原子力発電の設備容量を2050年までに世界で3倍にする」という呼びかけに賛同した。
2050年までに二酸化炭素など温室効果ガスの排出を実質ゼロとする脱炭素化を達成するには、原発が不可欠だとの認識だからだ。ぼくはそれを、まったくの誤解、幻想と思っている(「原発を推進したくても原発は増えない」)。
しかし日本政府のエネルギー基本計画によると、日本は発電の電源構成において再生可能エネルギーと原子力発電をともに20%以上に維持したい意向なのだ。
それを実現するには、日本は既存原発をできるだけ長く維持するだけではなく、原発を新設しなければならない。
それをどう実現するのかと思ったら、着々と次世代の新しい原子力発電技術を導入することで経済産業省資源エネルギー庁の革新炉ワーキンググループで議論され、そのためのロードマップまでできているのだ。
以下では、策定されたロードマップについて簡単にまとめ、それぞれにコメントしておきたい。
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福島第一原発事故後、帰還困難区域になった双葉町。後方には、「原子力明るい未来のエネルギー」とある |
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既存軽水炉
既存軽水炉(加圧水型炉、沸騰水型炉)の稼働期限を60年に延長し、できるだけ長く稼働させる。ただし、定検停止などによる停止期間は稼働とみなさないというトリックを使い、稼働期限を実質60年以上にした。こうして発電された電気に次世代型新規原発を将来建設するための資金を上乗せして、投資基盤が確保される。
実質60年以上稼働させるのはまだ、どこでも見られないのではないか。それを日本で実験するということか。日本人が実験台になっているということだ。安全だと宣伝されているが、安全といいながら福島第一原発であういう事故が起こった教訓は生かされたのか。
なお、世界の原発の平均寿命は現在約32年だ。ここには、開発に失敗して停止したものも含まれる。
革新軽水炉
2030年代中頃に、最初の商用炉を国内で建設する。たとえば関西電力はすでに、三菱重工とともに革新炉の建設を計画している。
日本の原子力産業はフクシマ原発事故後国内ばかりでなく、国外でも原発の新設を受注できないでいる。長期にわたって原発を建設していない日本の原子力産業が原発建設のノウハウと人材を維持しているのかどうか、とても心配だ。
小型軽水炉(SMR)
2030年代後半に、最初の実証炉を国内で建設する。
しかし世界では、最初のSMRの建設がコスト高から頓挫してしまった(「最初の小型炉建設プロジェクトが頓挫」)。それは、採算性がないからだ。SMRの安全性がどうなっているのかも、まだわかっていない。
高速炉
2040年代後半に、最初の実証炉を国内で建設する。
『もんじゅ』であれだけ失敗して、懲りないのかな。問題は、ナトリウムを漏れなく管理できるかだが、そのための技術が開発されたのかどうか、とても不安だ。以前は「増殖炉」ということばがよく使われていたと思うが、「高速炉」ということばに切り替わっているものおもしろい。もんじゅの失敗を忘れさせるためなのか。
高温ガス炉
2030年代前半に、最初の実証炉を国内で建設する。
ぼくはこれを見て、目を疑った。高温ガス炉は1960年代後半から開発され、いまだに実用化されていないのではないか。ドイツはとっくの昔に開発を諦め、実証炉は今廃炉中だ。
フュージョンエネルギー
核融合炉ということ。日本は核融合炉を実現するため、2023年に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定し、国家戦略とした。
太陽と同じ論理で、核融合によって永久にエネルギーを生産できると主張される。国際的には2050年までの実用化がいわれているが、その保証はまったくない。核融合も長年研究、開発されてきたが、実用化の目処が延期されるばかりで進んでいない。
現在フランスで、実験炉を建設する国際共同プロジェクト「ITER」が進められている。しかし計画は遅れ、現在2030年代中頃に運転するのが目標だ。ITERの技術基盤が、ロシアで開発されたもの(トカマク)であることも知っておいてもらいたい。さらに、核融合に強い関心を持っているのも世界ではごく少数。日本はそのうちの一つだ。
ドイツでは現メルツ政権になってようやく核融合を進めるといっているが、政権自体がどれほど核融合技術のことを把握しているかは甚だ疑問だ。
核融合反応が起こるには、強大が磁場が必要になる。そのため日本が得意とする超電導技術が求められる。超電導技術はたとえば、日本のリニアモーターカー「マグレブ」で使われている。
超電導状態では電気が無抵抗に流れるが、そのためには特殊な金属を使うとともに、マイナス150度くらいにしなければならない。そのためにたくさんの電気を使う。
その結果核融合で発電しても、発電される電力量(出力量)が投入する電力量(入力量)より少ない状態が続いていた。ようやく出力量が入力量を上回ったといわれる。しかしもう何十年も研究開発が続いているのに、現在はまだ、核融合反応が、だから発電も10秒余りしか続かないことも知っておいてもらいたい。
ロードマップを作成するといっても、ぼくがそれぞれの項目で挙げた問題は一つも提起されていない。それで、真剣に原子力政策、戦略を策定していることになるのか。ぼくには、夢だけを追っている幻想にしか思えない。
「原子力明るい未来のエネルギー」という看板は取り外された。しかし原子力政策を立案する官僚の頭の中では、看板が明るく、光り輝き、日本の原子力政策はフクシマ原発事故後もまったく変わっていないのがわかる。
(2026年2月05日) |