親権は剥奪できない

 日本で離婚する場合、まだ成人していないこどもの親権者を父母のどちらにするか決めます。その結果、日本では親権を失った親がこどもに会えなくなったり、こどもが親権を失った親に会えなくなったとよく聞いたことがあります。

 日本では、日本の親権はドイツのこどもの面倒を見る責任、義務(養育権)と同じだとされています。でも、それは大きな間違いだと思います。

 ドイツでは、親がこどもの親である権利、こどもが両親を持つ権利を剥奪することはできません。ですから、離婚してもどちらの親にもこどもに会う、こどもにはどちらの親にも会う権利があります。離婚時には、どちらの親がこどもの面倒を見るか、つまり養育権を持つかを決めます。さらに、養育権を持たない親とこどもが会うための規則を決めます。

 日本では、親権には法的に監護権と財産管理権が含まれるとされています。それだけであれば、ドイツでいう養育権に相当するようにも思います。でもそれを、親権とするのはおかしくないでしょうか。

 親である権利は、離婚しようが変わりません。親権者がそれを奪うこともできません。

 親権者が親権を盾に親とこどもが会う権利まで剥奪すると、それは親であること、親としての権利、こどもが親を持つ権利を奪うのと変わりません。それは、親権を失った親とこどもに対する人権侵害以外の何物でもありません。

 この問題では、日本人女性との国際結婚後離婚して自分のこどもに会えない外国籍の父親のことが問題となり、いろいろクローズアップされました。

 離婚協議中であっても、日本では簡単に離婚できることも知っておく必要があります。役所は離婚届を提出されても、それを形式的にチェックするだけで、夫婦の離婚の意思はおろか、署名、捺印の真偽までチェックしません。ですから、簡単に偽造して離婚できます。

 それを防ぐため、日本には離婚届不受理申出という制度があります。これを提出しておけば、離婚届は受理されません。しかしそれとて、2008年4月まではその有効期限が6カ月に制限され、期限が切れる毎に再提出しなければなりませんでした。

 離婚届不受理申出は、本人確認するために本人が提出します。

 ただ小生の友人は離婚協議中に脳出血で倒れ、家族がその旨を伝えて離婚届不受理申出を再提出しようとしましたが、認めてもらえませんでした。

 その結果、夫が倒れた妻の署名と捺印、さらに証人の署名と捺印を偽造して離婚届を提出し、離婚が成立。こどもの親権も奪われてしまったことがあります。

 離婚届が偽造とわかっても、役所は一旦受理したものは取り消しません。戸籍上、離婚が成立してしまいます。

 友人の場合、それは裁判によって覆しましたが、そのためにたいへんな時間と労力、経費がかかってしまいました。

 ちなみにドイツでは、協議離婚や裁判離婚など離婚に形態はありません。弁護士を立てて、家庭裁判所が国民の名の下に離婚を認める判決をいい渡さない限り、離婚は成立しません。

 それには、一年間の別居生活(生活費、銀行口座なども別々)、養育費の負担調整、婚姻中に発生した年金により将来の年金受給額を決める年金調整、婚姻中に発生した剰余財産の分担を決める剰余財産調整がされていることが前提となります。

 こうして見ると、夫婦の関係、親とこどもの関係において、日本とドイツではその重みがかなり違うように感じます。

 でも、それはドイツに暮らすぼくの偏見ですか?

(2019年1月04日、まさお)

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