日本語にはない関係代名詞

 日本語には元々、英語やドイツ語などのヨーロッパ言語にある関係代名詞がありません。関係代名詞は、二つの文章をつなげ、関係代名詞の後に続く文は、先行する名詞を修飾するとされます。

 この右に掲載した写真を見てみましょう。ベルリンにある難民収容所で撮った写真です。

 日本語では、関係代名詞の後で修飾される文を先行する名詞の前に持ってきて「Vサインをする難民の女性が窓際に立っていた」とします。でも英語やドイツ語の文では、まず「難民の女性が窓際に立っていた」があって、その後に関係代名詞がきて、「その女性は(関係代名詞)、Vサインをしていた」の順になります。

 ことばの上では、まず「難民の女性が窓際に立って」いて、「女性はVサインをしていた」の順に認識しているということです。これは、実際に状況を把握している順序と一致しています。それをなぜ、関係代名詞があるからと先行する名詞を修飾するために、「Vサインをしている」ことのほうを前に持ってくる必要があるのでしょうか。それでは文章において、実際に認識している順序を無視しています。

 関係代名詞は、二つのことを認識する文章を一文にする役割を果たしているにすぎません。日本語でも「難民の女性が窓際に立っていて、女性はVサインをしていた」とするほうが、関係代名詞のある原文における認識の順と、実際に状況を把握する順にマッチします。

 日本の学校では、英語の関係代名詞は先行する名詞を修飾するから関係代名詞以下の修飾文が名詞の前にくると教えます。そういうものであると暗記しなければなりません。それは、学校英語における一つの押し付けです。

 それでは、ことばと状況の認識の関係を考えるきっかけが奪われます。実際にある状態を認識する順と文章における認識の順が違うので、何か違うのではないかと感じてもおかしくありません。生理的にも違和感を抱きます。

 ことばを勉強する目的は、自分のいいたいことを相手に伝えて対話することであるはずです。でも日本の英語教育では文法が第一で、話して伝えることは二の次になっています。それでは、文法が正しいかどうかのプレッシャーに押されて、口からことばが出てきません。暗記した文法が正しいかどうか、まず頭で考えてしまうからです。

 それでは、何のためのことばなのかわかりません。

(2017年10月09日、まさお)

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