シュタットヴェルケは、エネルギー総合企業

 第1章で、ドイツには各地に「シュタットヴェルケ」と呼ばれる都市電力公社がたくさんあると書きました。ただ、「シュタットヴェルケ」を「都市電力公社」とするのは必ずしも正しくはありません。電力会社に関することなので、「電力」と入れましたが、「都市エネルギー公社」というするほうがよかったと思います。

 というのは、シュタットヴェルケは単に発電するばかりでなく、発電によって得られる熱を地域熱源として産業用や一般世帯の暖房、給湯用に供給しているからです。それは、コジェネレーションシステム(熱電併給システム)を使っているから可能になります。

 シュタットヴェルケによっては、天然ガスを供給しているところもあります。シュタットヴェルケがバイオガス発電をやれば、ガスの再生可能エネルギー化も促進できます。その事例については、ベルリン@対話工房のサイトに記事をアップしました(「都市電力公社もバイオガス発電」を参照。さらに、地域熱源の供給については「地域熱源で熱を供給」も参照)。

 またバス、トラム、地下鉄など公共交通を運用しているシュタットヴェルケもあります。

 シュタットヴェルケは、エネルギーに係ることなら何でやっている、やれるということです。それが、シュタットヴェルケのエネルギー転換に向けた強いところです。

 というのは、将来再生可能エネルギー化を進めるには、エネルギーを必要とする分野を連携してエネルギーをシステム化させて使うことがとても重要になるからです。

 すでに述べたように、電力と熱の供給はコジェネーションシステムによって行なわれています。生物資源を発酵させてバイオガスを回収してそのガスをガス網に供給すれば、ガスの再生可能エネルギー化が行なえます。バイオガスのメタン濃度を高めれば、自動車の燃料にも使えます。

 あるいは電気自動車が普及すれば、電気自動車の電池をつなげて地域の蓄電池として利用することも可能になります。なお電気自動車については、シュタットヴェルケがバスの電気自動車化を進めれば、その先駆者になれます。

 地域の配電網を所有するシュタットヴェルケが多いだけに、シュタットヴェルケはエネルギー利用全体をシステム化するのに最も適した位置にいるといっても過言ではありません。

 電気やガス、熱の需要が常に一定ではないので、エネルギーの需要者が多種多様であるほうが、エネルギー需要の変動を少なくすることができます。エネルギーが余れば、地域でまとめて貯蔵することもできます。電気が余れば、その電気でお湯をわかし、それをタンクに貯蔵します。あるいは、電気を使って水を電気分解させれば水素ができます。その水素は、自動車や発電用の燃料電池の燃料として使えます。また水素をメタン化すれば、そのガスをガス網に供給できます。

 このようにエネルギーを柔軟に利用するには、エネルギーすべてを運用しているほうが実現しやすいのです。

 ドイツでは、民間企業に売却されてしまったシュタットヴェルケもありますが、まだ多くは自治体の所有となっています。自治体所有であれば、シュタットヴェルケの事業の一部を組合化させてエネルギー事業への住民参加も促しやすい地盤があります。

 ドイツにはすでに、エネルギーの利用を各分野で結び付けるシステム提供企業へ脱皮しようとしているシュタットヴェルケがいくつもあります。シュタットヴェルケが今後の再生可能エネルギー化に向けて重要なインフラになるのは間違いありません。

 日本には、ドイツのシュタットヴェルケのようなものがないだけに、それに代わるものを自治体などが立ち上げていけるのかどうか。それが、日本にとってとても大切だと思います。

 その第一歩は、まず小さな地域単位で配電網を公営化することではないか。ぼくはそう思っています。

2017年12月26日、まさお

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