これからは、住民が発電事業者だ

 ドイツでは今年3月、電力最大手のEon社とRWE社が一部合併、吸収することで、Eon社が配電とエネルギー供給システム、RWE社が従来の発電方法と再生可能エネルギーによる発電と、棲み分けされることになります(詳しくは、ベルリン@対話工房の記事「ドイツ電力大手が再々編」を参照)。

 両社では、脱原発、エネルギー転換が進み、火力など従来の発電方法ではもうビジネスが成り立たなくなっています。そのため、両社は2016年に火力や水力など従来の発電方法から再生可能エネルギーを切り離してリストラしたばかりでした。それが、2年もしないうちにまたリストラしなければ、電力大手が生き残れなくなっているということです。

 ドイツのエネルギー転換は現在、再生可能エネルギーによる発電が発電全体の30%以上を占め、電気、熱、動力燃料のエネルギーを連携して再生可能エネルギーによって安定的に、効率よく供給するためのシステムを開発する段階に入っています。

 その意味で、最大手のEon社がシステムサービスに特化していくのはよくわかります。

 再生可能エネルギーによる発電においても、ドイツは昨年2017年から固定価格買取り制度(FIT制度)において、電気の買取り価格を入札で決めて発電施設の建設権を与える制度をはじめています。その状況については、ぼくのベルリン@対話工房のサイトで連載していますので(全体で5回ほどの予定)、そちらを参照してください(「ドイツのFIT制度、入札で競争論理を取り入れ」)。

 昨年の入札の結果、風力発電で最も安く買取り価格を提示した落札額は、電気1kWh当り2セント余りです。日本円にして3円ほどにしかなりません。今ソーラーパネルもかなり安くなってきていますので、太陽光発電の発電コストも1kWh当り6セントくらい(8円余り)にまで下がっています。

 再生可能エネルギーによる発電では、燃料コストやメンテナンスコストがほとんどありません。そのため、発電施設を建設する時の投資額が、発電コストの大半を占めるにすぎません。発電施設の設備費は、これからさらに下がっていくことが予想されます。それでは、再生可能エネルギーにおいても発電で利益を上げることができなくなっていくことが予想されます。

 それでは再生可能エネルギーが普及しなくなりますので、再生可能エネルギーに投資するインセンティブを与えているのがFIT制度です。ただそれでは、再生可能エネルギーを助成する負担が増えるだけなので、そのFIT制度と入札制度を組み合わせて再生可能エネルギーに競争原理をもたらそうというのが入札制度導入の目論見です。でもそれによって、再生可能エネルギーではエネルギーコストが安いという本来の現実がよりはっきりしてきます。

 でもここでは依然として、発電した電気を送電網に送って売電するという方法を前提としています。発電、送電、配電、販売を行なう従来型の電力ビジネスを基盤にしているにすぎません。

 でもソーラーパネルがすでに安くなっているほか、家庭用の蓄電池も次第に価格が下がってきました。今後、ソーラーパネルと蓄電池(電気自動車の蓄電池を家庭用に併用してもいい)をセットにして設置すれば、家庭内で安く、簡単に安定して自家発電、自家消費できるようになります。また集合住宅においても、ドイツでは共同でセーラーパネルを設置して共同消費する傾向が出てきています。そうなると、電力会社から電気を供給してもらう住民は益々減っていきます。

 住民は電気自家発電消費して、余った電気を売るだけになります。こうして、住民がみんな発電事業者になるのはそう遠いことではありません。

 そうなると、発電、送電をベースとした従来の発電ビジネスはもう成り立ちません。ドイツでは現在、それがもう見えてきたと思います。

2018年6月03日、まさお

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