再生可能エネルギーを社会と環境にやさしくする

 再生可能エネルギーは環境にやさしいと思われています。でもそれは、われわれ人間がどう使うか次第だと思います。

 大型の太陽光発電施設(メガソーラー)は、山や森林を切り開いて設置していては環境破壊です。それでは、何のための再生可能エネルギーかわかりません。

 ドイツでは、メガソーラーは山や森林などの自然環境を破壊しないように立地場所を選定します。

 ドイツ東部でメガソーラーが多くなっているのは、ドイツ東部には旧ソ連軍の兵舎や基地など旧軍用地がたくさんあるからです。それをメガソーラーの敷地として利用します。

 軍用地跡では、土地が油や化学薬品で汚染されています。その汚染は、専門的には残留汚染といいます。でも残留汚染を除去していては、莫大なコストがかかります。でも、太陽光パネルは残留汚染があっても問題ありません。ほとんど、そのまま利用できます。

 ぼくがドイツで取材したメガソーラーは、主に旧ソ連軍基地の跡地に設置されていました。

 ドイツはこれまで、ゴミを堆積処分してきました。そのゴミ堆積場跡が再エネの拠点になります。ドイツの大都市ハンブルクでは、ゴミ堆積場跡にメガソーラーと風車、バイオガス施設を設置して、それを「エネルギーの山」と呼んでいます。

 ゴミ堆積場は小高い丘になっているので、周囲に影をつくるものがありません。そのため、太陽光発電に適しています。また、ゴミ堆積場からメタンガスが排出されるので、それを燃料にすれば、バイオガス発電ができます。

 つまり再エネに利用するのは、すでに何らかの形で環境破壊が進んでいるところといってもいいと思います。汚染の過去があり、もう農地や森林などとしては使えない土地を利用します。

 それが、再エネのいいところです。その点をうまく利用して、土地を有効的に使います。

 風力発電においては、ドイツでは農地や森林、草原などに風車が設置されています。残留汚染のある土地に、太陽光発電施設と一緒に設置されているケースもありました。

 ドイツの場合、土地それぞれの利用目的が法的に規定されています。たとえば農地に風車を設置する場合、それを変更しなければなりません。その手続きは簡素化されましたが、まだまだ面倒です。土地を所有すれば、勝手に何を設置してもいい日本とは、土地に対する考え方が違います。

 ドイツでは、たとえ土地を所有しても、国土は共有のものという哲学があります。だから、土地の利用目的を法的に規定します。土地所有者は、自己目的のためだけに勝手に土地を使うことはできません。

 森林に風車を設置した場合、そのために切り開いた面積と同じ面積分、他の場所で植林しなければなりません。こうするのは、単に環境保護のためばかりではなく、国土共用性の哲学があるからだと思います。

 農地に風車を設置する場合、農地の所有者である農民に土地の賃貸料が入ります。ぼく自身、収入が入るのだからそれでいいではないかと思っていました。

 しかし、他の農民と共同で農地に風車を設置した農民クレメンス・ヴェーンスマンさん(57)は、そんなことはないといいました。クレメンスさんは、農民が自分で農地に風車を設置する理由について、こう語ってくれました。

 農地に風車が設置されると、農地の価値が下がる。農地は代々家族で引き継がれていくもの。自分が農地に風車を立てるのを認めて、土地賃貸料をもらっても、自分が農民として農地の価値を下げてしまったことになる。農民として、価値の低下した農地を息子に渡していくわけにはいかない。それなら、自分で風車に投資して、農地に付加価値をつけて息子に農地を引き渡したい。

 ぼくは、確かにそうだと思いました。

 再生可能エネルギーにおいては、営利目的のためだけに、再生可能エネルギーを使うべきではないという哲学が必要です。環境のこと、社会のことを考え、市民自らが自己管理して再生可能エネルギーを使いたいものです。

2019年8月18日、まさお

関連記事:
土地を共用する

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.