なぜ、飛行機を利用する?
ドイツで今、「Flugscham(フルークシャーム)」ということばが広がっています。「(飛行機で)飛ぶのは恥」という意味です。
気候変動による地球温暖化が、深刻になっています。それなのに、温暖化の原因となる温室効果ガス(二酸化炭素など)を排出する飛行機に乗るのは恥ずかしくないのかよと、飛行機の利用を批判することばです。少しやさしく解釈すれば、飛行機に乗れば温暖化に貢献するだけよと、警告することばだともいえます。
同じく温室効果ガスを排出する自動車に比べると、飛行機の燃料(ケロシン)には環境汚染を削減することを目的とした課税がほとんどありません。
空港など航空輸送に必要なインフラも、ほとんどすべてが税金で整備されています。
自国の航空会社が国際競争で不利にならないように、各国が自国の航空会社を税制上優遇して、保護しているのです。
今、格安航空会社の登場で、飛行機の利用者が爆発的に上昇しています。格安航空会社を誘致するために空港使用料を安くするなど、誘致合戦も激しくなっています。これは、格安航空会社によって観光客が増えれば、それによって経済効果が期待できるからです。
今、飛行機利用者の増加には、歯止めがかかりません。それに伴い、飛行機よりも格段に環境にやさしい鉄道が苦戦しています。
ドイツの場合、長距離列車の運行には再エネが使用されています(正確には、長距離列車に必要となる電気に相当する量に対して、グリーン電力が購入されているということ)。でもそれが、鉄道の魅力を増すインパクトにはなっていません。
飛行機においては、自分が飛行機に乗って排出する二酸化炭素分に対してお金を支払い、そのお金がNGOの行う世界の植樹プロジェクトなどに寄付されるシステムがあります。でもドイツのルフトハンザ航空によると、そうする利用者は全体の1%程度にすぎないといいます。
ドイツではFridays for Futureによって、気候変動に対する早急な対策を求める運動が活発になっています。同時に、飛行機に乗っていいのかよという反発も顕著になってきました。ドイツのFridays for Futureは大空港で、「(飛行機で)飛ぶのは恥(Flugscham)」と書いた横断幕を持ってスタンディングデモもしました。
ぼくは1990年代に、環境保護の研究者や活動家が、ドイツ国内を移動する時に絶対に飛行機を利用しないのを見て、とても感心したことがあります。
ただアポイントの関係で、どうしても飛行機でないと間に合わないこともあるのは事実です。
ぼくは日本に一時帰国する時も、飛行機を利用します。旅行目的であれば、船か鉄道で日本にいくこともできます。シベリア鉄道で、めったにできない体験もしてみたいものです。でもそれには、時間がかかりすぎます。それだけの時間的な余裕がないとできません。
だから、ぼくは何がなんでも飛行機はダメというつもりはありません。列車で移動できるなら、鉄道を優先します。ドイツ鉄道の高速鉄道ICEにはWIFIがありますから、道中ネット接続してメールのやり取りができます。
ドイツの高速鉄道では高速専用線がまだ少なく、在来線を利用して走っています。それが遅れの原因ともなり、ドイツ鉄道では遅れや運休があるので、安心して乗れません。
でも、僕のニーズにはそれで十分です。むしろ列車で移動するほうが、その間に仕事も片付けることができます。ゆっくり本や資料を読んで勉強もできます。
たとえばミュンヒェンへは高速専用線が開通して、ベルリンからは4時間あまり。飛行機を利用するのにかかる時間と変わりません。
ドイツ鉄道は今後、高速専用線を整備、拡充して、2030年までに大都市間で1時間毎に高速列車を走らせる計画です。でも、それにはまだ時間がかかります。
ドイツ鉄道は数年前に、夜行寝台列車の運行から撤退し、国内の夜行列車路線をオーストリア鉄道に譲ってしまいました。しかしドイツ鉄道はこの(2019年)冬から、一部で高速列車ICEを夜間にも運行して、夜行列車を復活させることになりました。
飛行機の利用者を鉄道に引き戻すためには、こうした鉄道路線の整備も欠かせません。
ドイツ政府はまた、世界に先駆けて飛行機の燃料ケロシンに代わる燃料を再エネを使って製造する技術を開発することを表明しています。再エネで水素を製造し、それを二酸化炭素と結合させて代替燃料にしようというものです。
確かに格安航空会社の進出で、飛行機でも簡単に安くどこにでも移動できるようになりました。でもぼくは、国内の移動の基本は鉄道だと思っています。移動手段を選ぶ時、まず本当に飛行機を使う必要があるのか、そして使うなら、それはなぜか考えてみたいと思います。
これが今、ぼくたち市民にできることではないかと思います。
2019年8月25日、まさお
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