水素は、再エネで製造

 再生可能エネルギーで発電すると、天候の変化に応じて発電量が大きく変動します。地理的にもドイツでは、ドイツ北部が風力発電に適しているので、風力発電施設の多くがドイツ北部に集中しています。さらに洋上風力発電は、北部のバルト海と北海でしか可能性がありません。

 そのため、風力発電された電気がドイツ北部で需要を大幅に上回っています。この不均衡を解決するため、ドイツ北部から南部に電気を送電するために、大容量の高圧線を設置することが急務になっています。でも、その建設が大幅に遅れています。

 この問題に対応するには、電気を貯蔵できればいいのですが、電気を貯蔵するのはそう簡単なことではありません。

 蓄電池では、容量を大きくすることに問題があり、大型の設備はまだありません。揚水発電では、立地の問題と自然破壊の問題があります。

 それに代わる技術として期待されているのが、余剰電力で水素を製造して、ガスとして貯蔵する技術です。これを、パワーツーガス(Power-to-Gas)といいます。

 水素を製造する方法はいろいろありますが、主流は、電気分解によって水素を発生させます。そのためには、たくさんの電気が必要です。それを、再エネでというのがドイツの考えです。

 製造された水素は、燃料電池車の燃料として利用できます。水素をそのまま天然ガス網に入れて、混合することもできます。あるいは、水素と二酸化炭素を反応させれば、メタンガスができます。そのメタンガスを、天然ガス網に入れることもできます。

 こうすれば、ガス(気体燃料)も再エネ化できます。これが、水素を製造する目的です。

 ドイツでは、すでに10カ所近くで再エネで発電された電気で水素を製造するパイロットプラントが動いています。その中で一番大きなプラントは多分、ドイツ南西部のマインツにある最大容量が6MWのパワーツーガス・プラントではないかと思います。

 プラントは、マインツのエネルギー公社シュタットヴェルケとドイツの産業ガス大手リンデ社によって運用されています。

 ただ今後さらに大容量化しないと、水素の製造を工業化して、再エネの貯蔵技術として利用するには、まだ不十分ではないかと思います。

 ただこのプラントが現在、世界では最大のプラントではないかと見られます。そのため、世界各地からプラントを視察するために、たくさんの人が訪れています。

 その中でも、プラントが日本からとても注目されています。東京電力からも、すでに2回、視察にきたと聞きました。

 東電は、原子力発電ないし(オーストラリアで)火力発電された電気で水素を生成しようと目論んでいるということです。

 日本は、国家戦略としてトヨタを中心に燃料電池車を開発、普及させたいとしています。その燃料として、多量の水素が必要になります。日本は、水素をモンゴルやオーストラリアで火力発電された電気で国外で多量に製造し、それを輸入する計画です。

 日本はさらに、火力発電で排出される二酸化炭素対策として、二酸化炭素を地下などに貯留するCCS(二酸化炭素回収貯留)技術も売り込む戦略です。

 既存の発電方法を使いながら、自動車の燃料として水素を集中的に製造しようとする日本。それに対し、再エネ化の一環で、電気の貯蔵技術として水素を分散型に製造しようとするドイツ。

 この違いは、大きいと思います。

 でも将来を考えると、従来の原子力発電や火力発電に依存していいのか、とても疑問です。再エネによる発電コストは将来、とても安くなります。でも、日本はそれを認めようとしません。それでは、将来水素を製造しても、価格競争で負けてしまいます。

 水素は、分散型をベースにして再エネで製造することに意味があります。そうしないと、自動車のゼロエミッションも実現できません。
 
2019年9月14日、まさお

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