汚染水か、汚染処理水か
福一の汚染処理水問題を考える(1)
福島第一原発で水素爆発などが起こって、もう10年になろうとしています。その後の後処理で問題になっていることの一つが、原発敷地内で発生する汚染水問題です。もう何年にも渡って問題になっています。でもまだ、解決の目処が立っていません。
日本政府と東電は汚染水を処理した後、海洋に排出したい意向です。でも地元漁民などが強く反対。政府は、海洋処分の決定を引き延ばしにしています。
このブログでは本来、エネルギーの問題について扱うことにしています。でもぼくは、この汚染水の処分問題は根深い問題を抱えていると思っています。最終的には、東電をどうすべきか(東電の位置付け)、さらに日本の将来のエネルギー政策にも関わる問題だと見ています。
なので、この問題をこのブログで取り扱うことにしました。
まずこの問題に入る前に、汚染水についてしっかりと把握しておく必要があると思います。一般に福一の汚染水といわれるものには、以下の3つがあります。
1)汚染水として回収し、まだ多核種除去設備(ALPS)で処理されていないもの
2)初期段階にALPSで処理されたが、ALPSがうまく機能せず、かなりの汚染が残っているもの
3)ALPSの問題が解決され、ALPSが安定した状態で処理されたもの
ぼくが経産省担当者の話を聞いて理解したところでは、1)と2)は今後まだALPSによって処理されます。3)はトリチウムが残っているが、単なる汚染水ではないと理解されています。そのため、ALPS処理水とか、汚染処理水とか呼ばれます。
3)がどの程度汚染されているかについては、ここでは議論しません。
問題は、3)も汚染水というと、政府や東電からは、もちろんこれからまだALPSで処理しますよといわれる可能性があることです。汚染されているのだから、みんな汚染水だともいえます。でも上記のように3つの区分があるのだから、それがわかるように区別して使うことが必要です。
日本政府と東電が海洋処分しようとしているのは、ALPS処理水とか、汚染処理水のことであることをここではっきりと再確認しておきたいと思います。
さて、本題の汚染処理水の処分問題です。
ぼくはこの問題では、単に汚染処理水を処分する方法についてだけ議論すべきではないと思っています。以下に挙げる2つの問題の枠組みで、どう処分するべきかを考えなければならないと思います。汚染処理水の処分だけを取り出して議論するべきではありません。
2つの問題とは、何でしょう。
一つが、汚染処理水の処分も廃炉の一環として行われるべきだということです。さらに汚染土の処分も、廃炉の一部だとみなすべきです。そうして、原子炉と原子炉周りの汚染だけではなく、汚染処理水と汚染土も含めて廃炉する構想が必要です。
もう一つは、東電を今後どうするかの問題です。現在、損害賠償は国が東電にお金を貸す形で行われています。事故に対しては、東電に責任があります。汚染処理水の処分も本来、国の監督の下で東電が行わなければなりません。
でも東電が事故に対して、損害賠償も含めてすべてのコストを負担すると、破産してしまいます。国がお金を貸しても、返済できる見込みはありません。それなら、東電をどうすべきなのかを考えなければなりません。
東電をどうするのか、その位置付けがはっきりしていないことも、汚染処理水問題を混乱させて長引かせている背景にあると思います。だからそれをはっきりさせ、その位置付けを前提に汚染処理水の処分問題を解決することを考えます。
汚染処理水問題における廃炉構想と東電の位置付けについては、今後別々にこのブログで詳しく取り上げます。
2020年12月27日、まさお
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関連サイト:
経産省のALPS処理水サイト
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