生ゴミもおならも再エネ

 日本酒、ビール、ワイン、ウイスキー。チーズ、ヨーグルト。漬物、キムチ、ザウアークラウト、ピクルス。鰹節、ウスターソース、アンチョビ。納豆、醤油、味噌、パン。紅茶、烏龍茶。

 ここでは、アルコール飲料、乳製品、野菜加工品、魚介類加工品、穀物加工品、お茶の順に分類して、食物を並べました。

 これらの食物には、一つの共通点があります。それは、すべてが発酵食品だということです。ここで発酵とは、微生物が発酵してわれわれ人間に益のある副産物である有機物を生成するプロセスをいいます。

 微生物の必要ない発酵もあります。ここでは、生物が有機物を酸素なしに合成して、エネルギーを得るプロセスをいいます。

 アルコール発酵や乳酸発酵ということばを聞いたことがあると思います。アルコール飲料や乳製品を飲み食いできるのは、そのおかげです。ここではさらに、メタン発酵のことも知ってもらいたいと思います。

 メタン発酵では、メタン菌によってたとえば水素と二酸化炭素が酸素がなくても合成され、メタンが生成されます。だからメタン菌は正確には、メタン生成菌といわれます。メタン菌は、動物の消化器官、沼地、地殻内などに存在します。ウシのげっぷやおならにメタンが含まれるのは、メタン発酵のためです。

 メタン発酵は、人の排泄した糞の混じる浄水施設の汚泥などでも見られます。そこで発生メタンを回収すれば、そのメタンは再生可能エネルギーとなります。

 そのメタン発酵を人工的に誘発してメタンを回収できるようにすれば、それも再生可能(再エネ)となります。そうして生成されるメタンガスを「バイオガス」といいます。

 ドイツでは、このバイオガスを使って熱電併給する方式(コジェネレーション)が盛んです。バイオガスを使って発電するのはガス発電の一種で、電力の需要に応じて電力を柔軟に供給できるからです。そのためドイツでは、バイオガス発電が調整力としてとても重要視されています。

 バイオガスはディーゼルエンジン(ガスエンジン)などで燃焼させ、発電します。その時熱も発生するので、その熱を熱供給用に使うことができます。だからバイオガス発電は、熱電併給(コジェネレーション)になるのです。特に熱は、道路下に埋設された配管を通して各世帯に地域熱として供給されます。

 バイオガス発電を行うには、メタン発酵させるために生物資源とメタン菌が必要となります。バイオガス発電が盛んなのは、農業においてです。農業では、生物資源の植物の葉や茎、メタン菌のある家畜の糞が排出されます。それを発酵槽で混合してメタン発酵させます。回収されたメタンガスは、バイオガス発電の燃料とします。

後方にある緑のドームが発酵槽。そこで、食物の葉や茎、わらなどを破砕して、家畜の糞と混合してメタン発酵させる

 これは、農業から排出される生物資源廃棄物(生ゴミ)を利用して発電ということです。発酵後に発酵槽に残った消化液や残さはまた、肥料として利用することができます。こうすれば農業において、バイオガス発電とともに循環システムが形成されます。その結果、農業に副収入が生まれ、農業がより持続可能となります。

発酵槽の内部ではメタンが発生する

 ドイツの地方ではすでに、村単位で地元の農業協同組合がバイオガス発電を行い、その排熱を村全体に供給しているところが増えています。それによって、熱供給の再エネ化が実現されています。

 都市においては、残飯や生ゴミを回収してそれを発酵槽で混合してメタン発酵させてメタンガスを回収。それをバイオガス発電の燃料として、熱電併給します。ドイツではそのために、ホテルやレストランなどから残飯を回収する廃棄物処理業者もすでに誕生しています。

レストランやホテルなどから残飯を回収するリフード社の残飯回収車

 回収したバイオガスをさらに、二酸化炭素と合成させてメタン濃度を上げることもできす。その高濃度メタンガスを天然ガス網に入れれば、化石燃料の天然ガスの代替ガスとして使うことができます。

 しかしバイオガス発電は今後、再エネ化された電力システムにおいて調整力として重要になるのが明らかです。バイオガスは天然ガスの代替ガスとするのではなく、バイオガス発電に利用して、優先的に熱電併給に使うべきだと思います。

 なおバイオガス発電では、生息中の植物から得られる生物資源を利用するので、それから得られたメタンガスを燃焼させても、二酸化炭素の排出は実質ゼロになります。カーボンニュートラルだということになります。

2021年12月06日、まさお

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関連サイト:
嫌気性排水処理(メタン発酵)技術の研究動向(国立環境研究所)

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