市民発電も持続可能でなければならない

 ドイツにおいて、再生可能エネルギーが広がった一つの要因は、市民自らが再生可能エネルギーによる発電に関わってきたからです。

 市民自らが共同で再生可能エネルギーによる発電施設に投資して、発電事業者としてそれを運用するケースもたくさん見られます。それを「市民発電」と呼びます。

 市民発電において、市民が共同で発電施設を設置、運用する事業形態としてよく利用されるのが非営利を原則とする「エネルギー協同組合」といわれるものです。市民発電においても、もちろん共同で営利を目的とする有限会社や株式会社などの企業を設置することもできます。

 しかしドイツでは、企業形態とするケースは稀です。

 では、どうして協同組合が市民発電の事業形態として選択されるのでしょうか。

 太陽光発電を主体にした協同組合であるドイツ南西部に拠点を置くエネルギー協同組合「エネルゲノ(EnerGeno)」は、組合員900人を有し、ドイツでも最大級のエネルギー共同組合の一つです。設置した発電施設は、組合員が出資した資金で設置されました。

 エネルゲノの業務執行責任者のドゥキーヴィッチさんによると、「協同組合のほうが民主的だからだ」といいます。協同組合のほうが、市民が連帯して相互扶助する形態として適しているからです。

 協同組合では、組合員がいくら組合に出資しようが、組合員一人当たりの投票権は一票に限定されます。また、組合員の出資最低額や最高額を規定することで、組合員の権限をできるだけ均一にしようとします。

 組合員が組合から脱退すると、出資金が返還されます。ただ、返還までに2年の猶予を設けて、その穴を埋めます。その間に、新しい組合員を探して新しい出資金を得ます。

 こうして協同組合では、資本の大きさや資本の流れに大きく左右されないようになっています。市民が共同で助け合いながら、目的を達成するのに適しているといえます。

 ぼく自身、協同組合は市民が再生可能エネルギーに携わる上でとても重要な事業形態だと思っています。今後、もっと拡大してもらいたいと思います。協同組合が広がれば、発電事業への市民参加も拡大します。それは同時に、地元で出資したお金を地元のために使い、地元に残すことでもあります。

 これは、地産地消をベースとする再生可能エネルギーの意義とうまくマッチします。

 ドイツでは、固定価格買い取り制度において発電施設の設置に入札方式が導入されました。それによって、小さな協同組合が不利になっています。そのため、協同組合同士が入札で連携したり、大きな協同組合が入札において規模の小さい協同組合を支援するなど、お互いに助け合う動きも起こっています。

 ぼくはドゥキーヴィッチさんに、市民発電と協同組合の将来の展望について聞いてみました。

 すると、思いがけない返事が返ってきました。

 「何とも予想できない」というのです。それは、「協同組合の設置において、イニシアチブを取ったステーキホルダーがもうすでに高齢化している。その後を継ぐ若い世代が出てくるのかどうかまだわからない」からです。

 ドゥキーヴィッチさんは、「今若い人たちが、毎週金曜日に抗議デモを行っている(Firdays4Futureのこと)。その中から、将来責任を持って行動でるような人材がどれだけ出てくるのか。それ次第ではないだろうか」と、ちょっと厳しい見方をしていました。

 ぼくは、ドゥキーヴィッチさんの見方にちょっとびっくりしたした。でも、その通りだと思います。若い世代が協同組合を引き継ぎ、市民発電を続けてくれないと、市民発電の灯はいずれ消えてしまいます。

 市民発電が持続可能になるには、世代を超えて市民発電を続けていくことを考えなければなりません。

(2919年7月21日、まさお)

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