先日、ベルリン市街を歩いている時、燃料電池車が駐車してあるのを見つけました。車体には、「風力発電で水素」と書かれています。
燃料電池車は水素車ともいわれ、水素を燃料にします。車体に書かれた「風力発電で水素」とは、「燃料電池車の燃料の水素を風力発電で製造していますよ」と、いっているのだと思います。
でも実際に、水素は風力発電で発電された電気で製造されるのでしょうか。あるいは、風力発電で発電された電気で水素を製造するとはどういう意味なのでしょうか。
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風力発電施設の多いプレンツラウ近郊には、水素ガス製造用のパイロットプラントがあった |
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風力発電はよく、夜間に発電量が増えます。夜間のほうが、日中よりも風の強い時間帯が多いからです。夜間それほど風が強くなくても、夜間の電力消費が少ないので、風力発電が増えると、夜間風力発電で発電された電気が余る可能性があります。
その余剰電力で水素を製造しようというのが、今のドイツの戦略です。再生可能エネルギーで発電すると、発電量の変動が大きいので、再エネ電気を貯蔵するために水素にします。
「風力発電で水素」と書いてあっても、実際に風力発電で発電された電気で水素を製造するという保証はありません。でもドイツの場合は、夜間風力発電によって余剰電力があれば、それを水素を製造するのに使うといっているにすぎません。
ただ現実には、水素を製造するプラントがまだ少ないので、ドイツはそういう戦略を構想しているということにすぎません。その点に注意しなければなりません。
水素は、電気分解によって水から水素を取り出します。そのために、たくさんの電気を使います。ただ日中は、再エネで発電された電気は電気として使います。だからドイツでは、電気自動車を優先させます。そのほうが、エネルギーを効率的に使うことになるからです。
電気自動車は夜間、充電することもできます。
でも夜間電気が余ると、電気で水素を製造して保管し、それを燃料として使います。そうすれば、余剰電力を効率よく使えます。
こうして、再エネによる発電量の変動を緩和すると同時に、水素をグリーン化します。
ただ問題は、それで燃料電池車に必要な水素を十分に製造、供給できるかです。さらに水素自動車を普及させるには、水素スタンドを各地に設置しなければなりません。そのためには、莫大な投資が必要です。
こうした問題があるので、ドイツでは水素車をバスやトラックなどの大型車に限定する方向です。
(2020年8月12日)
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