将来、水素依存度が高くなるのはだれも否定できないと思う。カーボンニュートラル化に向け、再生エネルギーで発電された電気で水素を製造することになるのも依存はないと思う。
ただ水素は保管、運搬が難しいという問題がある。それで、水素のキャリアとして注目されているのがアンモニア(NH3)だ。炭素を含んでいない。アンモニアのほうが水素よりも、俄然安全に輸送しやすい。
その点で、日本においてアンモニアに対する注目度が高いのもうなずける。
現在、アンモニアは100年以上も前にドイツで開発されたハーバー・ボッシュ法という方法で製造される。ただハーバー・ボッシュ法では、化石燃料が必要なほか、高圧高温で製造することから、エネルギー消費が多い。
そのため、カーボンニュートラル化に向けて、新しいアンモニアの製造方法が必要となる。研究開発競争が激しくなっている。
それに対し、水素社会に向けて水素戦略を決めたドイツでは、それほどアンモニアに対する関心が高いとはいえない。それは、どうしてなのか。
ドイツのある船のエンジンメーカーが、2024年までに船の燃料としてアンモニアを使えるように、改良型エンジンを市場に出すのではないかと見られる。しかしドイツでは、これといって、アンモニアにフィーバーしている気配はない。
それは、ドイツがアンモニアを発電用に利用するつもりがないからだ。ドイツは発電をすべて、再エネで行うつもりでいる。日本のようにアンモニアを燃料として火力発電やガス発電をすることは考えていない。
エネルギーをできるだけ効率よく使うには、再エネで発電された電気はできるだけ電気として使い、その他には水素を製造するために使用する。それだけでも、再エネだけで電気に対するすべての需要を満たすことは、難しい可能性がある。その時は、国外において水素の一部を再エネで製造することを考えている。これが、ドイツの戦略だ。
それに加えてさらに、アンモニアを製造するのにまで再エネで発電された電気を使っていては、再エネ電気がいくらっても足りない。ドイツでは、こう見られていると思う。
ドイツは発電において将来、これまでの火力発電や原子力発電のように蒸気機関に依存しないことを考えている。それに対して日本では、これまで通り蒸気機関にも依存して発電することが考えられている。
独日の間では、ここに大きな戦略上の違いがある。
(2021年6月12日)
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