再エネで熱を供給する方法

 熱供給を再エネ化するには、建物の断熱がまず一番大切なことを指摘しました。次に、再エネによって熱供給する方法として、どういう方法があるのかを見ます。今回はまず、その方法を一つ一つ列挙します。その後に順次、その利点や問題などについて書くことにします。

・ソーラーコレクター(太陽熱温水器)で、太陽熱を使って温水をつくる。温水はタンクに保管し、必要に応じて加熱する。

・ヒートポンプを使う。これは、空気中の熱を集めてその熱の温度を上げたり、下げたりするもの。すでに、冷蔵庫やエアコンなどで使われている。空気中の熱を使うので、再生可能エネルギーの利用方法とされる。

・薪などバイオマス(生物資源)を燃焼させる。暖炉もこれに当たる。日本でいえば、薪でお風呂を沸かすなど、炭や薪を燃焼させることもこれに相当する。

・農業から排出される植物の葉や茎を家畜の糞と混ぜて発酵させ、発生するメタンガスを回収する。それを二酸化炭素と合成させてメタン濃度を上げ、天然ガス網に入れる。都市では、残飯や生ゴミを回収して発酵させれば、同じことができる。

・使い古した植物性の食用油を回収して、それをバイオディーゼルに精製して、コジェネレーションシステムの燃料として、熱電併給する。

・再エネで発電された電気を使って製造された水素を燃料として、燃料電池で熱電併給する。

・再エネで発電された電気を使って製造された水素を、そのまま天然ガス網に入れる。

・再エネで発電された電気を使って製造された水素を二酸化炭素と合成してメタンガスをつくり(メタネーション)、それを天然ガス網に入れる。

 最後の3つの方法で示した再エネで発電された電気で水素を製造する方法は、パワー・トゥ・ガス(power-to-gas)といわれます。

 日本政府は、2021年10月に閣議決定されたばかりの第6次エネルギー基本計画の概要で、「熱需要の脱炭素化に大きな役割を果たす、需要サイドにおける天然ガスシフトや、メタネーション等によるガスの脱炭素化などを追求する。また、更なるガスのレジリエンス強化に取り組む」と、しています。

 第6次エネルギー基本計画は、2050年のカーボンニュートラルを目指し、2030年に向けた政策を示したものです。

 日本の政策を見ると、水素を新しい資源として何でもかんでも水素を導入し、ガス発電に利用するほか、水素でアンモニアを製造して石炭火力にまで利用しようとしています。水素自動車も普及させたい意向です。

 そうなると、水素の需要が莫大な量になるのは明らかです。でも水素は、たとえば製鉄やセメント、化学など産業を脱炭素化するための重要な資源でもあります。何でもかんでも、水素さえあればいいというものではありません。その供給量には、限界があります。

 水素を製造するには、たくさんの電気を使います。水素の需要を満たすのに、どれくらいの電気が必要なのでしょうか。日本の計画では、電気がいくらあっても足りなくなると思います。でもそれが、日本の水素戦略です。このままでは、日本政府の計画は失敗します。

 水素は産業を脱炭素化するため、産業で利用することを優先しなければなりません。その意味からして、水素を熱供給に利用することも断念します。

 次回からは、水素以外を利用した熱供給の方法について、少し具体的に述べていきます。

2021年11月07日、まさお

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関連サイト:
エネルギー基本計画について(資源エネルギー庁)

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