ヘイトスピーチは犯罪だ

 日本では、保守過激派が平然と反韓デモでヘイトスピーチをしている。しかしドイツでは、こうしたヘイトスピーチは犯罪行為となる。

 ドイツの憲法に相当する基本法は、その第3条第3項で

 何人も性別、民族、人種、言語、出身、信仰、宗教観、政治観によって差別、優遇されてはならない。何人も障害によって差別されてはならない。

と、保証している。

 基本法は表現の自由を保証する一方で、表現の自由を悪用して前述の基本的人権を侵害して、治安と公共の平和を妨害する可能性のある言論を乱用する者は民主主義を否定していると見なされ、表現の自由という基本権を失うとしている(基本法第18条)。

 この憲法上の基本は刑法で具体化され、その第130条が民衆扇動罪を規定している。その第1項によると、

— 国家、民族、宗教、あるいは特定の人種群に対して、住民の一部あるいは個人に対して前述の群ないし住民の一部に所属するということで憎悪を仰ぎ、暴力や恣意的な対策を求める者
— 前述の群、住民の一部ないし個人をそれに属するということから罵倒する、悪質、軽蔑的に扱ったり、中傷する者

が、民衆扇動罪に当る。

 民衆扇動罪を犯した者は、禁固刑、罰金刑に処される。

 日本の反韓ヘイトスピーチの場合、ドイツであれば3ヶ月から5年の禁固刑に処されるものと見られる。

 さらに1990年代に入って、ホロコースト(ドイツによるユダヤ人の大量虐殺)を否定する言動が起こったことから、こうした言動も民衆扇動罪の適用対象となった。

 公共の場で、ハーケンクロイツなどナチスのシンボルを使用、展示したり、ヒトラーやナチスを賛辞する言動をすることも民衆扇動罪となる。

 ドイツが民衆扇動罪を設けているのは、ナチスという過去を繰り返さないためだ。ナチスは民主主義の手続きを経て登場した。こうした過去の過ちを二度と繰り返さないためには、民主主義を否定することを認めてはならないという強い教訓があるのだ。

 だから、ヘイトスピーチなど民主主義を否定するものを認めないことが、法治国家の基盤となっている。

 日本の保守派がいうように、南京事件や従軍慰安婦のことをなかったと否認すれば、ドイツでは明らかに民衆扇動罪だ。

 このことは、日本でも肝に銘じてほしい。

(2013年7月15日、まさお)

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