さよなら減思力

「ドイツの憲法は何回も改正されてきた」の実態は?

 安倍首相はよくドイツの憲法は何回も改正されていると発言し、日本で改憲することを正当化している。ドイツ在住の日本人ジャーナリストの中にも、そう主張している人もいるようだ。

 実際にはどうなのか、その実態を検証したい。

 ドイツの憲法は、基本法がその代わりをしている。確かに基本法は、西ドイツのできた1949年から国会(下院に相当する連邦議会)の前任期が終了した2009年秋までの間に、57回改正された。

 そこで、その改正内容を見てよう。

 一番多いのは、連邦(国)と州の役割分担、財政負担の分担に関するものだ。地方分権化されているドイツならではのものだ。

 その他は、
・男女平等の強化
・郵政民営化
・違憲申し立て権の導入
・動物保護の明記
・選挙権取得年齢の引き下げ
・東西ドイツ統一による変更条項
など、時代の変化に応じて改正した制度的なものだ。

 こうして見ると、憲法の根幹、国の根幹にかかわる改憲はほとんど行われていないことがわかる。

 憲法、国の根幹に関わる改憲は、唯一以下だけだと思う。

 1951年4月、フランス、西ドイツ(当時)、イタリアなど6カ国がパリ条約に調印し、欧州石炭鉄鋼共同体を設立することで合意した。これは、現在の欧州連合(EU)の前身となるものだ。

 ここでは、欧州の戦後復興には各国が連携することが不可欠だということ、それから石炭、鉄鋼が軍需用にも使われることから、欧州の平和のためには各国が共同で開発、運用することが唄われている。

 それによって、第二次世界大戦の独仏の対立に終止符を打ち、欧州に経済・平和共同体を設立したのだ。

 これをベースに、西ドイツは1954年に憲法に当る基本法を改正して、バリ条約を承認するとともに、戦後武装解除されていた西ドイツが再軍備することを認めた。

 その後、西ドイツは55年に国防軍である連邦軍を創設し、NATOに加盟することになる。

 この54年の改憲は、ドイツの戦後史においてもたいへん重い内容を持っているのはいうまでもない。ここで注目すべきことは、改憲は他の周辺国と協調、協力するために行われたもので、戦後の宥和を進める上で周辺国の合意を得て行われたということだ。

 安倍首相が改憲の持論でドイツの改憲を引き合いに出すのであれば、安倍首相にはこの事実を十分に認識しておいてもらいたい。

(2013年7月31日、まさお)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.