憲法裁判所は市民裁判所

 憲法に関してドイツと日本で違うことは、ドイツには憲法裁判所があることだ。

 裁判所といっても、憲法裁判所は一般の裁判所とは異なる。これは違憲だと思えば、ドイツ国民であれば誰でも簡単に憲法裁判所に訴えることができる。だから、憲法裁判所に訴えることをドイツ語ではよく「(憲法裁判所に)電話をする」という。

 訴えても、弁護士は必要ないし、裁判費も発生しない。

 憲法裁判所に違憲の訴えがあると、まず憲法裁判所の裁判官が違憲裁判をするに値する内容のものかどうかを判断する。裁判することになると、訴えた側と立法化した政府側のいい分を聞く公聴会があり、その後に憲法裁判所が判決を出す。その間、憲法裁判所では提訴された内容に関してあらゆる資料を集めて複数の裁判官が何度となく審議して最終的な判断を下す。

 誰でもこう簡単に違憲だと訴えることができるので、ドイツでは憲法裁判所は「市民裁判所」とも呼ばれる。

 憲法裁判所の裁判官は政府が決定するので、その時の政府の政治色で裁判官が選ばれることが多い。しかしそれでも、憲法裁判所の判断は政治色のない中立的なものとなる。それだけ、憲法の重要性、中立性が意識されているともいえる。

 それは、憲法が法治国家の基盤となるものだという強い意識があるからだ。

 ドイツでは、これまで50回以上も憲法に相当する基本法が改正されている。しかし、憲法の根本を変える大きな改正はほとんど行われていない。これについては、すでに本ブログでも述べたことがある。

 ドイツで基本法を改正するには、まず国会の3分の2の同意が必要だ。これについてフォースクーレ憲法裁判所裁判長は記者団との懇談で、「憲法の持続性、安定性を維持するためには、この条項は絶対に変えてはならない」と語ったことがある。

 そして裁判長のこの信念は、ナチの過ちを二度と繰り返したくないというドイツ全体の思いからきたものだ。

(2014年5月03日、まさお)

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