ウクライナ情勢を見誤るな

 メールのやり取りから。

 ウクライナ情勢は戦争状態であることは間違いなく、両者(!!)がプロパガンダ合戦をしています。小生の友人の父親がロシアの有名なジャーナリストなんですが(政府系ではありません)、彼はあきれかえってもう何もいいたくないといっているといいます。

 最近になって、ロシアがクリミア半島へ最初の段階から派兵していたことがわかってきています。曝露したのはロシア兵の家族です。数千人のロシア兵(!!)がすでに死亡しているとの情報もあります。

 やり方がチェチェンの時とよく似てきていますね。

 ウクライナは政府軍といってもつきやけに造った素人集団で、警官、一般市民有志などが兵士として前線にでています。従軍したドイツのテレビ局のド キュメントなどがドイツでは流れていますので、その状況がわかります。

 捕虜にされたウクライナ兵士がとんでもない扱いを受けているビデオを新ロシア派が流しています。

 これを見た時は、ナチスドイツとそんな変わらない と感じました。こうしたウクライナ兵に対する扱いはアムネスティーインターナショナルもすでに批判しています。

 アムネスティーインターナショナルはウクライナ軍の砲弾が住宅地にいっているとしてウクライナも批判しています。

 ドイツメディアはまだドネツクに記者を置いているので、まだ現地の生の状況が伝わってきます。ドネツクでは住民の多い中心街では戦闘状況にはなっていません。ドネツク郊外の町への入口何ヵ所かだけで戦闘状態になっています。

 現在、ロシアはクリミア半島につながる東ウクライナ南部地域を攻めて獲得しようとしています。クリミア半島にはロシアの黒海での重要な海軍の基地 があるからです。エスカレーションさせないためには、南東部はもう放棄するほうがいいだろうと個人的には思っていますけどね。ただ、ウクライナ軍は撤兵を開始していますが、地元住民が反ロシアで民兵化する動きもあります。ですから、そう簡単にはいきません。

 もちろん、ロシアの安全保障を配慮せずにウクライナとEUが近づきすぎたというのが問題なのですが、実は、プーチンがそれに数年間前合意していたが、それがウクライナとEUが調印する直前に反対に回った。これは、当時のドイツの欧州委委員から直接聞いた話です。ただ、その後の欧州委側の対 ロシアの無神経さは、この元委員も批判していましたがね。

 昨日からNATO首脳会議が行われ、バルト諸国などでロシアとの国境でNATOが緊急対応できる能力を増強することが決定されています。日本でも報道されていると思います。新しい冷戦がはじまりました。ただこちらにいると、米国はウクライナ問題をヨーロッパ、特にドイツに任せてしまったという感は否めません。

 NATO首脳会議前のドイツ政府ブリーフィングを聞いた限り、ドイツはウクライナへの武器供与に反対、NATOとロシアで取り決めた基本関係合意をNATO側からは破棄しないという立場を変えていません。ドイツの意向は今のところ、首脳会議で通っています。ドイツは、後方支援、仲介はする が、ウクライナが直接ロシアと交渉しなさいという立場です。ただ、ロシアはしらん。それは新ロシア派の問題だといっているところにも問題がありま す。

 今回の措置は、ポーランドやバルト諸国などロシア国境沿いの国からの強い要望に押された形です。これら諸国が事前に英国、米国を納得させてしまっ た。特にバルト諸国にはロシア系少数派がいるので、これまでのウクライナと同じ論理で侵攻されてくるのをたいへん恐れています。バルト諸国は NATOとロシアで取り決めた基本関係合意書を破棄してほしいといっています。バルト諸国には、旧ソ連時代にロシア語化されるなど迫害されてきた 歴史があるので、過去に戻りたくないという強い気持ちがあります。

 経済制裁の影響については、ヨーロッパにその影響が出るのは間違いないですが、まだそれほど大きな影響は出ていないか、まだ把握のしようがないというべきかと思います。いずれにせよ、ヨーロッパ経済は2008年の金融危機から立ち直っていません。ヨーロッパ南部で経済指標がよくなっている のは、みせかけで操作されている疑いが強い。フランスはもうかなりガタガタですが、それは経済制裁の影響とは思われません。

 昨日、欧州中銀が公定歩合をまた引き下げて0.05%になりました。デフレ化を恐れています。これとて、金融危機をまだ引きずっている証拠で、欧州中銀はもうほとんど打つ手をなくしています。この金融危機の処理でいえば、ドイツなど欧州が求めていた金融市場規制強化が米国、英国の反発で実現できていないことが後でたいへんな痛手になる と思います。これは、完全にネオコンにやられてしまっています。金融危機前の状況と変わっていません。ただ逆にいうと、銀行を助けるために莫大な 税金を使って人工的に銀行を生かしてきたのですから、ネオコンのいう自由主義とは全く逆に皮肉にも計画経済化(!!)したということでもありますね。

 そんな遠くない時期に、2008年以上の金融危機がくるのではないかと思いますけどね。各中央銀行がとんでもない量のお金を市場に流しているの で、いずれまたバブルがはじけます。

 世界各地で戦争状態になっている時に恐いのですが。。。
同時に、現在エボラ問題が忘れがちになっているのも恐いのですが。

 もちろん、これから冬になればロシアからの天然ガスが大きな問題になります。天然ガスは暖房用に使われていますので。ドイツはロシアからの供給が止まっても5ヶ月分備蓄されているといわれていますけどね。各国、ロシアからの天然ガス離れを図っていますが、間に合 わないでしょうね。

 ロシアは今、中国向けに大きなパイプラインを造っていますが、いろんな意味で、現在の情勢で得するのは中国だと思います。中国が政治的にも、経済 的にも益々強くなっていくんでしょうね。ですから、ロシアが強行にでればでるほど、何もしない中国が漁夫の利を得て、世界的にはロシアの力が弱く なっていくと思います。

 ウクライナにとっては、もう負け戦であることは明らかです。それを承知で攻め続けるプーチンには和平の意志はまだありません。ドイツでは、プーチンは冷静というよりは、一旦足を突っ込んでしまって国内を納得させる出口がみつからなくなっているという読みが多いですね。冷静だったら、欧州委のバローソ委員長に電話で、やろうと思ったら2日でキエフを落とせるよというような脅し発言はしないと思います。

(2014年9月05日、まさお)

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