純粋さを求めるドイツビール

 ドイツでは、樽ビールを注ぎ入れるジョッキやグラスの上部に短い横線が入っています。横線の上には、0.3リットルや0.5リットルと書かれています。これは、その横線までビールが入っておれば、ビールがその量だけ入っていることを意味します。もちろん、白い泡の部分はビールとはみなしません。

0.5リットル用グラスに入ったビール

 0.5リットルのビールを注文すると、ビールがその横線まで入っているべきだという目安を示します。泡が横線より下まであると、ぼくは注文主として、ビールが十分に入っていないとクレームして、注ぎ足してくるよう求めることができます。

 まあ実際には、ビールが少なくても多少のことは多めに見ることのほうが多いですがね。日本人だから甘いのかもしれません。

 ドイツらしいといえば、ドイツらしいともいえます。でもビールの国ドイツでは、ビールに関しては厳しいのです。

 ビール造りの規則も、その一つです。ドイツのビールは原則、オオムギとホップ、水だけを原料にします。酵母を入れて、ちょっと酸味のある酵母入りビールもありますが、それ以外は、オオムギとホップの種類とその混合比を変えて、味の違うビールを造ります。それ以外の原料がビールに入っていてはなりません。

 製造地の水も大きなポイント。南部の水は柔らかいので、ビールの味もまろやかになります。水が硬いと(ミネラルが多い)、ビールは苦くなります。

 この規則は、今から500年前の1616年4月23日に制定された「ビール純粋規則」に由来するとされています。ビール純粋規則は、世界最初の食品規則だともいわれます。

 実際には、ビール規則というよりは、砂糖を入れた甘いビールが他の地方で造られていたことから、それに対抗するためにドイツビールの本場であるバイエルン地方でビールの標準規則を設けたにすぎないとも見られています。その他、バイエルン地方においてビール造りを有利にするために、バイエルン地方でたくさん生産されるものだけを原料とするためだったとする説もあります。

 いずれにせよ、500年の伝統が今もドイツビールに生きています。これは、すごいとしかいいようがありません。

 ドイツのビール業界団体に、500年前のビールはどんな味だったのだろうかと問い合わせたことがあります。多分、苦すぎて今の人には飲めないだろうという返事が返ってきました。

 日本の主なビールには、ライスやコーンが入っています。そういうビールは、ドイツではビールではありません。ドイツでは以前、オオムギとホップ、酵母、水以外のものが入っているビールをビールとして販売してはならないことになっていました。それでは、他国で生産されたビールはビールとしてドイツに輸入できません。そのあtめ、ヨーロッパの他のビール生産国が1980年代に訴えます。その結果、ドイツのビール純粋規則に準じないビールも「ビール」としてドイツで販売できるようになりました。

 ライスとコーンの入った日本のビールも、ドイツでは現在、ちゃんと「ビール」として販売されています。

 ただ長年ドイツのビールを飲んできたぼくには、日本のビールはビールとは感じません。特に、日本で飲むビールはひどい。冷たすぎてビールの味がしません。冷たさだけが売りのビールとしか思えません。それでは、ビールの味がわからない。ビールの味の違いも感じません。

 ぼくはドイツでは、常温でビールを飲みます。冷たすぎないように、わざわざ暖めてビールを出す飲み屋もあります。

(2017年9月27日、まさお)

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