森と社会の多様性

 フェリス女学院大学では、高雄綾子先生の「サスティナビリティとジェンダー」という講座で話をさせていただきました。そのため、ジェンダーの視点をできるだけ多く盛り込むようにしました。

 終戦を前後して、ドイツ占領地域に移住していたドイツ人がドイツに帰還しようとします。その中には、女性もいました。女性たちが道中性的暴力を受けたことについて話をしました。死者も出ました。この問題はドイツで最近ようやく実態が明らかになり、ダブー化されずに語られるようになりました。

 サスティナビリティ(持続性)については、ドイツの再生可能エネルギー化から話をしようと思っていました。ふと、ドイツ南東部のテューリンゲンの森で送電網が新設されるのを取材していた時のことを思い出しました。森を切り開いて高圧高架線を設置する場合、森の植生が単一化しないように注意しなければならないと説明されました。必要に応じて、他種の木も植樹するのだそうです。

 なぜ、森の植生を単一にしてはならないのか。森に一種類の木しかないと、害虫ですべての木が枯れてしまう危険があるからです。森が多種の木で構成されておれば、一つの害虫ですべての木が被害を受けることはありません。森が多種なほうが、強風にも強いということでした。こうして、森が守られます。森を末永く維持していくには、森に多様性が必要になります。

 ぼくは思わず、「憲法では言論の自由、報道の自由、宗教の自由が守られていますが、それはなぜですか」と学生さんたちに聞いていました。

 ぼく自身も予定していなかった質問。自分でもびっくりしました。学生さんたちの返答は、たいへん頼もしく、うれしくなるようなものでした。

 何人かの学生さんが、答えてくれました。どれも、いろいろな意見が必要だからとか、社会には多様性が必要だからというものでした。ぼくはドイツで聞いた森の話から、ある一つの「害虫」に襲われても社会が崩壊しないようにするには、社会にいろいろな意見を持っている人、宗教の異なる人が暮らし、社会が多様でなければならないのだといいました。

(2018年2月17日、まさお)

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