与党とは何? 野党とは何?

 ドイツでは、政権を担当する政党のことを「政権政党(Regierungspartei)」と呼び、政権に入らない政党のことは「反対政党(Oppositionspartei)」です。それ対して日本では、「与党」と「野党」といいます。

ドイツ首相府

 日本の与党の「与」とは、一体どういう意味なのか。日本語の辞書を見ると、「あずかる、関係する」、または「くみする、仲間になる」とあります。政権を「あずかる」には、政権がまず先になくてはなりません。政権がはじめからあるのなら、政権を担当する政党は政治を行なうのではなく、政権を管理するだけのものかと思ってしまいます。政党が政権に従属して、「仲間になる」のかとも解釈できます。

 さらに、政権とは日本では一体どういうことをするものなのでしょうか。

 日本の政治はよく、官僚政治だといわれます。政権が交代しても、官僚機構は変わりません。各省の事務次官以下の官僚は、多くの場合そのまま残ります。官僚は年功序列で決められたコースを進み、定年して省庁を離れるか、定年前に天下りして政府関係機関に移ります。とても不思議な構造です。

 日本では、政治家は人気タレントであったり、世襲で選ばれます。政治家が政治で取り決める専門的なことに素人なのは致し方ありません。ただそれだと、政治家は官僚にいいように操られます。

 社会が複雑になってきているだけに、政治家にわからないこともたくさんあります。官僚用語でぎっしりの法案と、とてつもない量の関連文書。素人政治家に理解してこなせる話ではありません。官僚が政策を立案し、政治家がめくら版を押して政策を決定します。

 それが、日本の政権の政策です。情けない話ですが、「与党」という表現は、日本の政治状況をうまく表していると思います。

 次に野党。野党の「野」は、「外」という意味です。これは、政権に入っていないということしか表現していません。ドイツの「反対政党」は、政権政党とは政治的に対立していることをいいます。政権政党ではないから、反対政党と呼ぶわけではありません。違う政策で議論し、お互いに影響を与え合う。それが反対政党ということです。それが、民主主義の基盤です。

 ぼくは、ドイツ統一前東ドイツに暮らしていました。東ドイツは、一党独裁制でした。そういう体制下でも、政権政党以外にも政党がありました。これらの政党は政権に入っていなくても、独裁政党である政権政党を支持するだけで、マリオネットでした。衛星政党と呼ばれていました。これが、社会主義独裁体制の政治構造でした。東ドイツの政治構造は、政権に反対する政党のない全体主義だったのです。

 今の日本の政治構造を見ると、政党間に大きな違いがなく、多様性がありません。野党の一部は、自民党から「分家」した衛星政党にすぎません。衛星政党は、自民党の目指す改憲勢力です。最大野党だった民進党でさえも、その一部には自民党の衛星政治家がいました。その民進党が立憲民主党と希望の党に分裂したのは、当然のことだったのだと思います。改憲勢力の自民党衛星政治家とそうでない政治家が分かれたということです。

 こうして見ると、日本で反対政党といえる政党は、日本共産党しかないと思います。「衛星」というのに抵抗があれば、「仲間たち」だけど「外」にいるということです。「野党」という表現も、日本の政治構造をうまく捉えた表現だと思います。

 社会では、市民がいろんな考えを持っています。その社会の多様性を政党が反映させるのが、本来の政党の姿です。そうしてはじめて、政党が多様な市民の関心と利益を代表します。

 しかし、日本の政治はそうなっていません。仲間たちの政治構造なのです。自民党と仲間たち。全体主義に近いといっても過言ではありません。首相が個人的な関心で簡単に衆議院を解散できるのも、民主的な議会政治とはとてもいえません。

 このような全体主義的な状態では、対話によって議論して民主的な政治を行うことはできません。だから、国会では十分に議論しないまま強行採決が行なわれています。これでは、民主的で持続的な政治環境は生まれません。

(2017年11月23日、まさお)

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