議会は簡単に解散できない

 ドイツでは、首相が議会を解散するハードルが非常に高くなっています。ドイツに不信任決議というものはありません。首相は、議会に信任を問うことしかできません。国会が首相を信任しなかった時だけ、首相は議会の解散を大統領に提案することができます。ただ、解散の最終判断は大統領に委ねられます。

 野党が首相の不信任決議を提案するのではなく、首相が国会に信任を問い、信任されたかった時にだけ、解散の提案権がある。それは、議会制民主義としてとても理にかなっていると思います。

ドイツの国会議事堂
正面真ん中に「国民のために」とある

 それに比べ、首相の意志で簡単に衆議院を解散できる日本の制度はとても独裁的だと思います。ドイツがこういう制度にしているのは、ナチスの台頭の過去の教訓があるからです。だから、首相に解散権を渡さず、国会が民主主義の中心になっています。

 現在、国際的に中道政治が主流になっています。それが、世界で平和を維持してきた基盤です。でもそれによって、政党間の政策に違いがなくなり、政治への無関心を引き起こす一つの大きな要因ともなっています。政策に違いがないのなら、どの政党も同じ穴のムジナということです。

 社会が複雑になってきたことから、市民にわかりやすく、政策の違いをはっきりさせることもたいへん難しくなっています。

 この状況が、極端に偏って、単純な論理で説明するポピュリズム政治を台頭させる要因にもなっています。

 政治に対して無関心になるとは、政治について考えない、抗議しても政治は変わらないと諦めることです。その結果、社会について考えることを止めて自己中心的になります。それは、多様性のある共同体社会の一員だという枠組みから内面的に離れていくことにもなります。そこにも、ポピュリズムの単純な論理に魅力を感じる土壌があります。

 この状態は、ナチスが台頭した1930年代とよく似ていないでしょうか。そういう時代において、独裁者が権力を独り占めしないようにしなければなりません。そのためにも、議会は簡単に解散されてはなりません。

(2017年11月28日、まさお)

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