保守主義は対話をきらい、お互いの不信を募らせる

 米国のトランプ大統領は2017年1月の就任演説で、「アメリカ・ファースト」といいました。これはアメリカ第一主義、米国の利益を最優先させるということです。

 現在、世界の経済はそう単純な構造で出きているわけではありません。たとえば、自動車を見てみましょう。自動車の場合、最終組み立てされる場所が製造地です。でも、最終組み立てされる部品のほとんどは自動車の製造地で製造されたものではありません。その中で使われる技術も、各国に散らばったいくつもの技術を組み合わせてできています。

 今経済が成り立っているのは、その連携関係があるからです。経済は、そのネットワークをベースにして成長します。新しい技術に対するアイディアや新しい知見は、そのつながりの中で意見交換、情報交換(対話)して生まれます。技術標準や環境基準も、対話の中で調和されます。それを無視して、一国の利益だけを最大限に優先することはできません。技術について対話しながら共存し、利益も共有しなければなりません。それが、新しい技術を生み、発展していく地盤です。

 米国トランプ大統領は、それを1930年代に戻そうとしています。輸入品に多額の関税を課して、保護主義に走ろうとしています。さらに国際的な枠組みではなく、二国間の連携を強化することで、米国の利益を勝ち取ろうとしています。その結果、国際的に連携する枠組みが壊れて各国が保護主義に傾き、国益を求めてぶつかり合う危険が膨らみます。それは同時に、軍拡にもつながります。

 1930年代と違い、現在は各国が政治的にも、経済的にもお互いに連携する絆が強くなっています。その絆が今、崩壊していく危機に曝されています。

 トランプ大統領やプーチン大統領、その他独裁的首脳の登場で、問題の解決に向けて各国で対話することも極端に減りました。冷戦時代には、危険な状態になれば、各国で対話して、リスクを回避するシステムがありました。でも今、それがありません。

 対話がないということは、お互いに情報交換しないということです。それでは、相手の状況がつかめません。その結果、お互いに不信を募らせるだけになります。

 その絆を守るために、対話を求める地盤を再び築いていかなければなりません。その絆が崩壊すれば、1940年代のように世界情勢がもっと危険になるのではないかと心配です。

(2018年4月13日、まさお)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.