残業がなくなったら、どうする?

 日本では、過剰な残業が問題になっています。それに対して、残業をしないドイツの労働体制にも関心が集まっています。

 ドイツでは、80年代、90年代前半に比べると、残業がかなり増えています。でも、日本のようにだらだらと無駄に残業するようなことはありません。それでもドイツ人は、仕事の終わる時間が近づくと、帰宅する準備をし出し、終業時間になるとすぐに帰宅するといわれます。

 ドイツでは、休暇もしっかりとります。有給は、約4週間ほどあります。それに加えて祭日もありますので、ぼくがドイツで日系企業のプラント建設で調達の仕事をしていた時は、ドイツの労働者が休んでばかりいるように感じました。

 休暇で担当者がいないと、それを代行してくれるも社員もいません。困っているので何とかしてくれと拝み頼んでも、担当が休暇から戻ってくるまで待ってくれといわれるのがオチでした。

 それでも、経済が動いているのですから、逆に関心せざるを得ません。

 そのドイツで現在、フレックスタイムはもちろんのこと、労働体制がかなり柔軟になっています。特に統一数の90年代半ばからドイツ経済が不景気に陥り、ヨーロッパのお荷物といわれた時からです。ドイツ経済を立て直すにはどうしたらいいのか、労使が交渉して、労働者の労働時間をフレキシブルにする措置が講じられてきました。

 その一つで重要なのが、時間口座(Zeitkonto)といわれるものです。これは、残業代を支払わずに、会社の忙しい時に残業した時間を『貯蓄』しておくものです。それで、会社が暇な時に貯めた時間を使って休暇をとります。

 ドイツの労働者を見ていて感じるのは、個人の生活が優先されていることです。仕事は生活のためにし、自分の家族、生活を守ることが優先されます。ですから、女性はもちろんのこと、男性が産休をとることにも躊躇や偏見は、それほどありません。

 残業しないで帰ってきても、家庭サービスや友人付き合い、趣味などで有意義に時間を使うことができます。

 さて、日本ではどうでしょうか。残業がなくなったら、自分の時間をどう使うのでしょうか。

 ドイツ人の知人は、以前ドイツ製薬会社に務めていて、その日本法人にいたことがあります。その時に、日本人社員に必要ないのに会社にいないで残業ゼロを通知したそうです。でも日本人社員は、仕事が終わっても帰宅しよとしませんでした。困った会社側は、わが社では残業をゼロにしていますと、特別に社員の家庭宛に手紙で通知しなければならなかったと、知人は笑いながらいっていました。

 ドイツではまた、都会で生活している人の中に、ガーデンハウスを持っている人が結構います。仕事が終わった後や週末に、ガーデンハウスで庭仕事をしたり、家族や友人とおしゃべりしたりします。

 90年代だったでしょうか。これはいいと、このドイツ式ガーデンハウスを日本でも取り入れようとしました。でも、すぐに日本人には無理だと分かりました。日本人はガーデンハウスにいても何をしていいかわからず、時間を持て余すだけでした。

 ここに、残業問題に関して日本の根本的な問題がないでしょうか。

 残業を減らすのは、とても大切です。でも、それによってできた時間をどう使うのか。それができなかったら、残業がなくなると逆に困ります。自分の生活を大切にして、自分の時間を使うという習慣、生活スタイルが日本ではないからです。

 この点で、残業を減らすことで議論するばかりでなく、生活意識と生活スタイルをどう改革していくのかも、真剣に考えていくことが必要だと思います。

(2018年6月08日、まさお)

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