自衛隊と災害救助

 安倍首相が自衛官募集で、自治体の「6割以上が協力を拒否」と批判したことが問題となりました。その後、各自治体のほとんどが個人情報を保護する形で、それぞれが何らかの形で協力していたことが明らかになっています。

 自治体への政治的な圧力となりかねない安倍首相の発言。これは、憲法改正で自衛隊を合憲化したい首相の思惑とも重なっているように思えてなりません。

 それが、自衛官をどのように募集しているのか気になり、調べてみるきっかけになりました。それでわかったのですが、募集のチラシなどでは主に自衛隊が災害救助で活動していることを強調するだけの写真が使われています。

 これは、おかしくないですか。

 自衛隊の本来の任務は国防であり、現在、集団防衛の名目で自衛官が国外の戦地に派兵される可能性もより高まっています。

 同時に、国内での災害で自衛隊が派遣される回数も増えています。でもそれは、あくまでも自衛隊の支援が必要な時に制限されなければなりません。

 にも関わらず、自衛官の募集において本来の任務の写真を使わずに、災害救助の写真を使うというのは、「騙し」だとしかいいようがありません。災害におけるボランティア活動が増えている現在、ボランティア活動と自衛隊の災害救助活動が混同されてはなりません。ボランティア活動への憧れを利用して、自衛官を増やそうという思惑が見え見えです。

 安倍首相が憲法改正で自衛隊の地位を憲法で明確にしたいのなら、自衛官募集で自治体を批判するのではなく、この自衛隊の募集方法こそ批判すべきです。自衛隊本来の任務を伝えてはいないと。

 自衛官募集で自治体を協力的でないと批判するのは、ピントが外れています。

 また、災害救助を軍でやることについても再考することが必要だと思います。災害救助はまず民間ベースで行うべきであり、どうしてもそれ以上に支援が必要な場合に限って軍の出動を要請するのが正当な手順です。

 そのためには、災害時に市民によるボランティア参加も受け入れることのできる公的な支援機関を設置するべきだと思います。日本にそういう機関がないのも問題だと思います。

 ドイツには、その種の組織として内務省下に技術支援隊(THW=techinisches Hilfswerk)が設置されています。民間ベースの災害支援機関です。ドイツで大人とされる18歳から参加可能で、ドイツ各地に設置されているほか、国外で災害があった時にもドイツの救助部隊として派遣されます。

 防災対策に必要な装備を完備し、民間ボランティアの技術研修も行います。

 災害時の救済は、ドイツではこのTHWと消防、警察が中心。どうしても必要な時に国ではなく、被害を受けた州が軍に支援を要請します。これも、大切な点だと思います。

 安倍首相は、憲法改正ばかりに走っています。でも、民主国家をベースにして憲法を改正したいのなら、まずこうした役割分担をするのが先決です。そうでなければ、憲法改正で再び軍事国家を再建したいのかと思われても致し方ありません。

(2019年3月08日、まさお)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.