高齢者の選挙権を制限すべきか

 先日、ドイツ人の友人と話をしている時です。友人は、自分の16歳の息子が、高齢者は何歳まで投票していいか制限すべきだと主張しているといいます。友人も、息子のいうことは理解できるし、制限していいと思うといいました。

 ドイツの一部の州では、州議会選挙において16歳から投票できるところがあります。でも、友人の息子のいるテューリンゲン州においては、16歳ではまだ選挙権がありません。

 最近の選挙結果を分析すると、国政与党では60歳以上での得票率が一番多く、18歳から29歳までの一番若い有権者層での得票率が一番低くなっています。

 16歳の若者からすると、政治が「高齢者ファースト」の政治を行っている、行わざるを得なくなっていると映ってしまうのだろうと思います。

 今、社会における高齢者の割合が増加するばかりです。それに伴い、民主主義も危機にさらされていると思っても、仕方がないかもしれません。

 日本では「シルバー民主主義」ということばもあって、高齢者の増加に危機感を抱いている人たちもいるということです。

 でも高齢者は、本当にそんなに権力を持っているのでしょうか。そして、社会における高齢者の権限を抑えるために、高齢者の選挙権に年齢制限を設けるできなのでしょうか。

 ここでは、世代間の公平さについても議論しなければなりません。でも、本当に高齢者の選挙権を制限すれば、社会は公平になるのでしょうか。

 ぼくは、そうは思いません。

 高齢者の増加とともに、世代間の問題が議論されるようになってきました。でも世代間の問題は、今生きている世代の間の問題と、もっと長い時間的なスパンで見た世代間の問題を混同してはなりません。

 気候変動の問題においてもそうですが、今世代間の問題で議論すべきなのは、もっと先の世代のことも考えて、社会をいかに持続可能なものにするかの問題です。それが、今われわれ同時代人に課せられたとても重要な課題だと思います。

 でもそれは、高齢者が増加している問題と直接関係のある問題だとは思えません。

 今の政治の問題は、目先の利益しか考えていないことです。政治には、長い時間のスパンで見た将来ビジョンがありません。若い世代も含め、今生きている世代の利益のためだけに政治が行われています。

 そうすれば、選挙で票につながります。

 今の政治では、今よりももっと先の将来について考えていないことが問題なのです。将来については、政治がイニシアチブをとって今どうすべきかを議論しない限り、将来のことは忘れられるばかりです。

 政治の使命は、将来についても考えることです。そうしない限り、社会は持続しません。

 民主主義は、今生きている世代において成り立ちます。民主主義は、その次の世代との間では成り立ちません。その時、その時間の壁を乗り越えて、どうすれば将来世代との間においても民主的になれるのか。それについては、ぼくたちが今、みんなで考えなければなりません。

 こう見ると、高齢者の選挙権を制限するのは、世代間の問題ではないことがわかります。今高齢者の選挙権を制限しても、政治はよくなりません。社会も世代間で公平にはなりません。

(2019年11月15日、まさお)

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