薄くなった生地

 12月になると、わが家ではドイツの典型的な冬の料理であるケールと豚肉の煮込み料理を友人たちと一緒に食べる「行事」を行います。この行事は、友人のゲアトがぼくたちを招待してやっていたものです。でも、そのゲアトが2年前に亡くなったので、わが家でその行事を引き継いで続けることにしました。

 このケール料理は、塩漬けの豚肉と脂身入りのプチプチソーケージをケールと一緒に煮込むものです。最初にケールとみじん切りの玉ねぎ、それに豚のバラ肉を煮込んで、ケールを一晩寝かせます。食べる前に、塩漬けの豚肉と脂身入りのプチプチソーケージをケールと一緒に煮込んでできあがり。肉とソーセージの脂っこさがケールに吸収され、ごってりとした肉料理の重さを感じさせません。

 その時、友人のヘアマンもきていました。ヘアマンは、モードデザイナーでした。定年退職する前は、アパレル専門学校や大学などで教えていたこともあります。

 ヘアマンは、おじゃべりがはじまるともう止まりません。モードデザイナー時代の過去について、いろいろと体験談を語ってくれました。

 その時、ヘアマンのいったことがとても印象に残っています。

「昔の生地は、厚かった。それに対して、今の生地は薄くてペラペラすぎる。昔は、厚い生地で長く着てもらえる衣服をデザインするのがデザイナーの仕事だった」と、ヘアマンはいいました。

 それに比べると、今の衣服は生地が薄いので長持ちしません。長く着てもらう必要がないので、斬新なデザインで注目を浴びます。長く着てもらうためのデザインは、もう必要ありません。今デザインされる衣服は、使い捨て同然でいいのです。

 ヘアマンには、この現状が不満でたまりません。つい、ことばが荒くなってしまいます。

 この現状は、今ぼくたちの買っているすべての製品にあてはまります。長持ちする製品をつくっていては、経済が成り立たないからです。数年使えば壊れてくれないと、新しい製品を買ってもらえません。スペアパーツがあっては、製品を修理して長く使えるようになります。だからスペアパーツは、最初の数年しか保持しません。

 製品はまた、修理できないようにも作られています。壊れたら、修理しないで新しいものに取り替える。それが、今のものつくりの原則です。

 こうして、今の使い捨て経済が成り立っています。これが、資源を無駄に使い、環境を汚染する原因ともなっています。

 今、気候変動が問題になっています。気候変動は、単に地球温暖化だけの問題ではありません。どういうものをつくり、それをどう使うのかの問題でもあります。

(2019年12月27日、まさお)

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