難民問題は終わっていない

 2015年から2016年にかけ、たくさんの難民がドイツに押しかけました。その後、EUがトルコと難民協定を結びます。それに伴い、トルコ経由でヨーロッパに流れ込む難民が激減します。

 難民協定に基づき、トルコによる難民受け入れに対して、EUが莫大な資金援助をしてきました。

 それ以後はむしろ、北アフリカから地中海経由でヨーロッパに入ろうとする難民のほうが問題になりました。こちらの難民は、主に地中海沿岸国が受け入れます。

 こちらの問題では、リビアの政情不安が難民流入に大きく関係しています。

 ドイツでは、難民受け入れ数がここ数年来激減しています。

 ところがトルコが、シリア北西部への軍事介入を開始しました。ここでは、長年のクルド人問題が背景にあります。ただそれによって、トルコ軍がシリア政府軍とロシア空軍に衝突する危険がありました。案の定、トルコ兵士数十人が空爆で死亡しました。

 NATO加盟国であるトルコは、NATOに支援を求めます。しかし、NATOは軍事介入したくありません。ロシアと衝突するのを回避したいからです。

 それに不満なトルコは、トルコ国境を開放。トルコに滞在するたくさんの難民をヨーロッパにいけるようにしました。トルコと国境を接するのは、ギリシャとブルガリアです。難民は、ギリシャ国境からヨーロッパに入ろうとします。

 それに対しギリシャは、国境警備を強化。難民の流入を防ごうとします。EUは今のところ、ギリシャの立場を支援する意向です。

 この状態がいつまで続くかは、わりません。すでにEU加盟国の多くが、新たな難民受け入れを拒否する意向示しています。そのためには、ギリシャがEUの難民対策の牙城となります。

 それに対しドイツでは、昨年2019年から実際に難民を受け入れることになる自治体の中から、難民を再び受け入れてもいいとする動きが出てきています。2015年から2016年に受け入れたたくさんの難民が、すでに難民施設を退去しました。自治体の難民施設が空いているのです。

 ドイツが受け入れた難民の約半分がすでに仕事を持ち、自力で生活をはじめています。税金も納めています。それなら、人道的にこどものある家族を優先的に受け入れてはどうかという自治体が増えています。

 自治体自身、2015年からの難民の嵐によってたくさんのことを学んだとされます。自治体では、首長の政党色に関係なく、難民を受け入れるのはもうそれほど問題ではないとしています。

 住民においても依然として、再び難民を受け入れてもいいとする住民がいます。数年前と同じように、ボランティアで難民の世話をする市民がたくさん出てくると思います。

 でも、ドイツ社会は全体として、本当に難民の受け入れに納得しているのでしょうか。

 ぼくは、それについてはまだ疑問に思っています。

 それは、極右の台頭を見ればわかります。極右の台頭に対し、これまで政治は無力でした。難民問題でも、難民を受け入れる意義と責任、難民に生活保護を給付する意味について、政治はこれまで何も説得してこなかったと思います。

 政治は、難民の流入が激減したことにあぐらをかいできただけです。

 難民は、ドイツ社会に入って自力で生活できるようになるまで、ドイツの生活保護受給者と同じ生活保護受けることができます。それについて、政治は社会に説明して納得してもらっていないと思います。

 それが、保守的な市民や左派的な市民が極右政党に投票している背景の一つだと思います。
 
 難民を移民として社会に受け入れ、統合する意義について、政治が何もしてこなかった証拠です。

 これからの社会は、移民の統合なくしては成り立ちません。この点について、政治と社会はもっと真剣に取り組まなければなりません。

 そうしない限り、難民問題は難民が流れてくる毎に続きます。人種問題も永遠に続きます。

 これについては、在日問題や部落問題を抱える日本社会においても同じことがいえます。

(2020年3月06日、まさお)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.