コロナウイルスと民主主義

 コロナウイルスが世界を揺るがしています。

 ドイツでは、昨日2020年3月12日の1日だけで新たな感染者が800人以上増えました。これは、それまでの全感染者数の約半分に相当します。激増したといってもいいと思います。

 今日12日夜の段階で、全感染者数は2800人弱になりました。死亡者は4人。他国に比べて、死亡者が少ないのが特徴になっています。

 ドイツでは、早い段階から検査をしっかり実施してきたといわれます。その点、検査が十分に行われていない日本や米国と違い、現状がより正確に反映されていると見られます。

 感染は、中国ではじまりました。それだけに感染のはじまる当初は、ドイツにおいてもアジア系市民に対する差別がありました。中国人の女性が産婦人科のアポイントがあったにも関わらず、医院に入る前に診察を断られたことがありました。一時、人種差別だと騒がれました。

 でも今は、そうはいってはおれません。ドイツの感染源はイタリア経由。観光などでイタリアでウイルスをもらってきたドイツ人などが、ドイツで感染を拡大させています。

 コロナウイルスがなぜこわいのか。それを知らないままに、心配していてはいけません。パニックになってもいけません。

 今、情報がたくさんで出回っています。冷静に情報を選択し、情報に振り回されないのが大切です。

 コロナウイルスがこわいのは、ウイルスの特性がわかっていないからです。だから、ワクチンがありません。治療法もありません。新しいウイルスなので、体内に抗体がなく、免疫性がありません。抗体ができても、それがどう反応するかもわかっていません。

 それが、インフルエンザと大きく異なる点です。ぼくは、インフルエンザなどとは比較すべきではないと思っています。

 ドイツは、州による連邦国家です。ですから、コロナウイルスに対する対策も、各州が独自に決定します。

 学校を休校にするかどうかの判断は、まず地域毎に設置されている保健所の医師が判断します。これは、感染者の出た学校などだけを休校にするよう指示するということです。

 さらに自治体に感染者が増えると、自治体首長が学校を休校にするかどうか、政治的に判断します。州全体で学校を休校にする場合は、州が政治的に判断します。

 ここで政治的とわざわざ入れたのは、科学的なバックグランドがあって、生活を制限するのは、政治的にしか判断できないからです。

 ドイツでは国に、全国で学校を休校にする権限がありません。これまで、国の保健大臣が大きなイベントの中止などを要請してきました。ただこれには、法的な拘束力がありません。それを踏まえて、各州が独自に判断します。そのため、各州でばらつきがありました。

 昨日、首相府に各州州首相が集まって、コロナウイルスに対する対策を協議しています。そこでは、国と各州が密接に調整して、対策を一本化することで合意されています。

 しかしそれでも、最終判断は州が行います。これが、民主的な手続きです。

 昨日、ドイツのメルケル首相は、人との接触をできるだけ控えるように発言しました。これは、感染の拡大にブレーキをかけるためです。一つに、感染による死亡率の高い高齢者や既往症のある人に感染が広がらないようにします。さらに、感染者が急増して病院がベッド不足にならないようにします。

 ここでは、個人の自由や権利が制限されます。ただ、個人の自由と権利を制限するかどうかは、個人の判断に委ねられます。だからメルケル首相は、市民の連帯と共生の必要性を強調します。

 市民の連帯と共生のため、個人の自由や権利を制限するかしないかは、個人の問題です。国家は、それを強制しません。市民の理性に委ねるということです。

 これこそが、民主主義的な手法だと思います。

 国家はその時、市民の理性を信じなければなりません。そのため、国家は市民に民主主義を定着させるとともに、市民の理性を高める努力をします。これは、政治教育が必要だということでもあります。それが、民主国家の使命だと思います。

 それを怠ってきた国は、法律などによって市民の自由と権利を強制的に制限しなければならなくなります。その典型が独裁国家です。

 それは、国家首長に民主主義の思想がないからです。市民に民主的に政治教育を施すことを避けます。市民が自立して、政治や国家に批判的になってはならないからです。市民の理性も信じられません。

 だから、市民を上からコントロールしようとします。

 日本では、新型インフルエンザ等対策特別措置法を巡ていろいろ議論されています。それをドイツから見ていて、このように感じました。

(2020年3月13日、まさお)

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