聖火リレーを中止してほしい

 3月20日、日本にオリンピック聖火が到着しました。まもなく、日本で聖火リレーがはじまろうとしています。

 東京五輪・パラインピックを延期、中止すべきかについては、いろいろ議論されています。でもぼくはここで、それについて議論するつもりはありません。

 世界各地で、新型コロナウイルスが流行しています。米国ジョーンズ・ホプキンス大の統計によると、世界中で感染者は30万人を超えました。感染者はこれからさらに増え続けると予想されます。ドイツでは、長期的には全体で70%の市民が新型コロナに感染するだろうと推定されています。

 イタリアでは、昨日3月21日だけで800人近くが亡くなっています。一昨日も、約600人が亡くなりました。イタリアの死者数は中国での死者数を超え、5000人を越える勢いです。

 その背景に、医療制度の問題があります。病院に呼吸器が不足しているのです。医師は呼吸器が足りないので、誰を生かすか、誰を死なせるかで、いつも苦渋の選択を迫られています。

 感染の拡大を抑えるため、各地で市民の外出が制限されています。市民生活に大きな影響が出てきました。経済活動も大きく制限されてきました。この状態では、たくさんの人が失業し、生きる糧を失っていきます。これから、どうして生きていけばいいのか。たくさんの人が不安に思っています。

 それだけではありません。世界の各地で、戦争が起こっています。シリア戦争は、これまで何年も続き、終息する気配がありません。それによってたくさんの人が難民となって、祖国を離れました。路頭に迷い、最悪の条件の下で暮らしています。

 聖火リレーは、こうような世界情勢の下で行われようとしています。

 日本での聖火リレーに対しては、東日本での大震災と福島第一原発の事故のことから、いろいろな思いを持っている方もいると思います。

 その気持ちはよくわかります。でも今、開催国のエゴだけで聖火リレーを行っている時期ではありません。

 オリンピック精神を思い出してください。

 オリンピック精神は、スポーツを通して、差別をなくすこと、友情を持つこと、連帯感を持つこと、フェアプレーの精神を持つこと、お互いに理解して手をつなぐこと、世界平和を目指すことを唱えています。

 世界中で、これだけたくさんの人が苦渋と不安の中で生きています。生と死の間で戦っています。それを思うと、今こそ世界全体で友情を示し、連帯を示す時だと思います。

 それこそが、オリンピック精神だと思います。

 聖火リレーでは、たくさんの著名人がリレーに参加します。お祭り騒ぎのようになってしまうと思います。でも今、聖火リレーでお祭り騒ぎをしている時ではないと思います。

 日本でも新型コロナが拡大しているだけに、聖火リレーでたくさんの人が集まるのは避けなければなりません。

 ぼくは、こうした状況を考えると、聖火リレーは行うべきではないと思います。あるいは、お祭り騒ぎとならないように何か違う方法を考えるべきだと思います。

 9年前、東日本大震災が起こった時、日本には世界からたくさんの支援が寄せられました。世界が日本に友情と連帯を示してくれたのです。今度は、日本が友情と連帯感を持って世界と一つになる時です。

 リレーに参加する著名人も、世界と連帯するために辞退する勇気を持ってほしいと思います。

 それでも聖火リレーを実行して、日本でお祭り騒ぎをするのは、世界中で生死をかけて戦っている人たちを無視することになります。

 日本にいると、気づかないかもしれません。でもベルリンにいるぼくには、今の情勢からして、聖火リレーに大きな違和感を感じます。

 世界と連帯するため、聖火リレーは中止してほしい。ぼくはそう思います。

(2020年3月22日、まさお)

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